「心にいつも竜を」ふんわり感想 #ここドラ

呉葉さん主催「心にいつも竜を」のふんわり感想です。
ここドラ執筆陣が口々に「いつものやつです」「いつも通りです」と発言していたのをたいへん微笑ましく見守っていましたが、本当に、一分の隙もなく偽りありません。つまり作風がちっともかぶっていませんので、そういう意味でも、ご新規さん・常連さんともにお勧めできる本です。
「竜と人」のテーマがお口に合うようでしたらぜひともどうぞ。

告知サイトはこちら→http://kokodora-anthology.tumblr.com/
小説の試し読み、イラストサンプルもありますよー。
本編のイラスト・カット、別冊については素面でも一万字くらい語れますが、本を開いて衝撃を受けて頂きたいので言及は控えめです。
これ言っちゃうとおしまいですが、見ればわかります。執筆陣が次々とお隠れになって┏┛墓┗┓と化した破壊力です。
花を手向けてやってください。


●凪野基「末裔」


「世界の半分をお前にやろう」という伝説が息づく世界の「その後」を書きました。後味さっぱりのエンタメです。まのいさんの別冊のイラストが……本当にすごくすごいので見て!!メルがめちゃくちゃ可愛い!!
モモンガメルちゃん(命名)に悶絶し、おへそ!褐色肌金髪金眼!!じゃらじゃら!と転げ回り。
これ、もしかして、コンセプトアートって言うやつじゃない……?ヒッ(心停止)
さておき、初稿からかなり手を加えたので、まのいさんにも楽しんでもらえたら何よりです。


●孤伏澤つたゐさん「胎生の竜」


試し読み雑感→つたゐさんは申告通りの愛のお話。竜と愛しあっていると言う少年と、その状態は正常ではなく治療されるべきものであるとするルダと「私」。試し読みで公開されている片鱗を読むだけで、ひりひりするような少年と竜の愛を感じます。治療を拒絶するだろう少年と竜の行く末を思うだけで涙が……(早い)

試し読みで一番読み違えていたのがルダの立場(や考え方)でした。
つたゐさんの竜の本「はだしの竜騎士」ではすれ違いや空回りが多くて、無機的で無情で切なく思ったものですが、それに比べて今作はとても有機的。
火や道具を使うという観点でヒトとそれ以外を分けたとき、加熱調理された「食事」を口にするって、最大限に「ヒト」だと思うんです。そこで線を引くとすると、少数派はどっちだという話で、それが「私」視点で語られる物語に居心地の悪さと、理解の及ばない深み、相互理解など傲慢だと読者に突きつけてくるのだと思います。
昔の(きっと今もある)同性愛(をはじめとするセクマイ)は病気だ、に近い印象を受けました。たぶん「私」は竜に近づこうとして拒絶された経験があるんじゃないか。あるいは身近な人が竜に魅入られたりしたんじゃないか。そんなふうにも思いました。いちばん満たされていない、どうすれば満たされるのかもわからない人。
いつものつたゐさんの作品なんですが、「カレーライス」と「生存戦略」には驚きました。これまで見たことのない言葉だったから。
愛ってなんだ。ましてや異種愛とは?ただ遺伝子の命ずるままに生きる命が、互いを思いやり想いを交わすことなんてあるんだろうか。愛、とは?
読者を思索に突き落とす作品に添えられた鉄子さんのイラストが見事で……あの眼が!眼がね!そして蝶のうつくしさ……。
大丈夫、ハッピーエンドです。


●柊呉葉さん「ドライフ・ライフ」
試し読み雑感→呉葉さんの作品は唯一の現代物ということで、そして竜がマシュマロのようにフワフワ!にやけますよね……!どうやらドライフのお役目に巡りあったようですが、まずは餌。餌ね。この世界の竜は雑食なんでしょうか。(だといいね!)コメディの予感しかありません。よいドライフ・ライフを……!

ふわもこもちもちの竜が見所!加えて、喧嘩っぱやくて、遊んでそうなエキモト君がめろめろになってゆくさまに、読者の顔も緩みっぱなしになること間違いなしです。
思っていたほどコメディ全振りではなくて、出会いがあれば別れもある。それは完全に竜の都合で人間の事情や心情なんて斟酌されない。自然界の(なんて書くと大げさですが)厳しさが垣間見えます。情に流され、欲に振り回されるのはいつだって人間なのだとうっすら闇が透けて見えるのは、私が闇をため込みすぎてるからでしょうか。
この世界での竜と人間は互恵関係でもなくて、竜は人間を利用してるだけなのでは……?むしろ竜にとって人間は害獣なんでは?とも思えるのが、つたゐさんの作品とも共通しますね。ごちゃごちゃ言わずとももふもふは正義、でいいような気もしますが。

そしてそして!闇など見ないふりをして!!ZARIさんのー!!モッフモッフモキュー!!を!見て!!
これはしあわせのもふもふだ……。完全に光だ……。
オールバックが乱れるのも正義……。


●飛瀬貴遥さん「ラジスラフの人攫い竜」


試し読み雑感→飛瀬さんは、妖精とか有翼人がヒトの隣人として暮らしているファンタジックなファンタジー(わかって)を書かれる方だと思っているのですが、いい意味で期待を裏切らない柔らかさと親しみがありました。ミルシュカに何があったのか、そしてこれからどうなるのか、楽しみです。

試し読みから印象の大きな変化がなかったのが飛瀬さん。呼吸するように自然に、隣人としての竜が描かれています。
戸惑いつつも竜との暮らしに馴染んでゆくミルシュカ。うちに抱く鬱屈までもいつしかほぐされていて、人間とのスケールの違いや、いわゆる竜の叡智のようなものが描かれていて、まさに飛瀬さんのファンタジーだと嬉しくなりました。
で、「灰峡翼竜」に「ラジスコラド」ってルビを振るセンス……!(机バン)老いとともに鱗の色が変わる……!先見……!!(机ドン)
ミルシュカは生まれ育った村に帰るのか、はたまた峡谷の村で過ごすのかは明らかにされていませんが、ラストシーンで村長がすっ飛んで来るところなどはおっさんと少女コンビの萌えツボをぐいぐいと突いてきますので、やはり「いつもの飛瀬さん」だなあって。

ビジュアル的にも美しい飛瀬さんの物語を彩る、帝夢さんの表情豊かなイラストがまたたまらんのです。ミルシュカは、芯が強いながらも控えめなタイプなのかと思っていたのですが、くるくると表情が変わるイラストを見ていると年相応の溌剌とした女の子に思えてくるから視覚情報は強いです。
別冊では竜がたっぷり拝めてしあわせ……!


●並木陽さん「暗黒竜フェルニゲシュ」


試し読み雑感→並木さんの「いとも大きく、尊い御方……」はまさに並木さんだし、双頭の竜も(このメンバーでは)並木さんならではだと感じます。そしてえろす!えろす!えろす!(重要ですね)そして壮大なドラマの幕開けを感じさせるヤーノシュ……!ドキムネが止まりません。

並木さんの最新作!とあって、期待されている方も多いのではないでしょうか。私ももちろんその一人なのですけど、ご安心ください、並木作品です。うっとりメロメロの並木作品です。舞台で見たいやつです。
確かな知識と経験、資料と構成・描写力が相まって、豪華なアンソロジーのラストを飾るに相応しい力作に、咲さんの繊細なイラストが華を添え、ゴージャスかつプレシャス、ロマンあふれるドラマチックな絵物語となっています。
王族に仇なすとして滅ぼされた一族、その生き残りの少年ヤーノシュが復讐を誓って美しい王女マリーチカに近づく。火刑台に架けられつつも難を逃れたヤーノシュの姉イブロンカは双頭の竜の妻となっていた――というわけで、ヤーノシュとマリーチカの関係の変化、そして双頭の竜のコミカルな掛け合い、イブロンカとヤーノシュの再会といった人間関係のドラマと、タイトルにもある暗黒竜フェルニゲシュの美竜っぷりが見所です。
一番長い作品ですが、メリハリのある展開で飽きません。息を詰めて結びまで一気に読んで、ほうっとため息をつくはず。
咲さんの美麗なイラストがふんだんに添えられ、別冊では設定のあれこれも拝見できるという眼福すぎる仕様……!!


そして、まったくの偶然なのですが……というか、呉葉さんの編集によるものですが、幕開けと幕引きにそこはかとない共通点があるのは自作贔屓ではないと思います。
ネタバレというほどではありませんが、ぜひ本誌を通読してお確かめください。

10/28テキレボ6で初頒布、お買い物メモ、あるいは代行サービス申込リストに漏れはありませんでしょうか。
11月以降、「灰青」でも委託頒布を行いますので、直参イベントにて頒布します。(福岡とか京都とか……)どうぞお楽しみに!
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