おっさん×少女アンソロジー「掌を繋いで」感想その1 #掌繋

献本を頂いてからずいぶん時間が経ってしまいましたが、おっさん×少女アンソロジー「掌を繋いで」の感想です。
1回で全部上げようと思ったんですが、全部で1万字ほどになりそうな予感ですので2回に分けますね……。
前半は、たつみ暁さん「ブルーマロウの恋」~赤柴紫織子さん「桜と梅」まで。
後半は(自作を華麗にスルーして)最後までアップします。まだ書き終えてません頑張る……頑張ります……。
コミティアへの援護射撃になればいいなー。

例によってネタバレ考慮していません。未読の方はお気をつけください。


「ブルーマロウの恋」たつみ暁さん

色が変わるお茶と、ひまりの心の変化を重ね合わせた可愛い作品。ひまり視点のお話ですが、きっと正博にいもすごく年下のひまりに遠慮していた部分があって、歩み寄るためにひまりのお茶に興味を持ったんじゃないか、などと深読みしてみたり。


「魔女は孤高に叫く」まるた曜子さん

守られるばかりではない子ども、切なくて悲しいけどいいですよねえ……。魔女にまつわるあらゆることは、魔女に対してとても厳しいけれど、それを(多くは幼くして)受け入れなきゃならないのってそのこと自体が試練じみてる。逆に言えば受け入れることができる器が魔女であるのかもしれないけれど、生まれ育った環境に甘えずに自分の手で自分の幸せを掴みに行くオティーリエ、かっこいいです。
そしてミハルはどこからどこまで計算していたのかなあ、って小憎らしく思いつつも、やっぱり捨ておけない子犬のようなおっさん……!


「発見」木村凌和さん

イケメンスキンヘッド(ガタイ良)の服の裾をつまんで人混みを歩く日本人形然としたお嬢さん、素晴らしい絵です……! あまつさえ二人で棒つきキャンディを、というアメイジングなエピソードもあってこの世は控えめに言ってパラダイスです。
メイズと桜花はいわゆる「殴り愛」、描写のそこここに再戦も辞さぬ、という火花が散っているイメージがあるのですが、ラストシーンは「太陽と北風」というか、花がほころぶようで。それを見るメイズの視線の温度の変化も素敵。


「その約束を忘れるな」少色さん

読みつつニヤニヤが止まりませんでした。ひたむきな女の子ととぼけた感じのおっさん、という組み合わせは王道だからこそ何度でも美味しくいただけます。もぐもぐ。
最初は庚子の好きな人が誰なのか、本当にわかっていないプロデューサーさんが、最後には庚子のために禁煙を考えるっていうのがまたもうたまりません。


「幻想狩りの師弟」夕凪さん

訓練ではいい成績なのに、実戦では撃てない。村を滅ぼした魔狼に一矢報いたい気持ちの強さと、同じ心でせめぎあうトラウマと。「ごめんなさい」と謝罪するレナリアの心情を想像すれば、確かに誰にも何も言えるはずもなく、黙って寄り添うほかにないように思います。踏み込みすぎないで一定の距離を保つことが最善であることをジェイクはわかったいたんですね。らぶらぶちゅっちゅも好きですが、こういう「敢えての距離」も良いものです。いわゆるモンスター的な存在が「幻想」っていうネーミングも素敵。


「探偵はイラナイ」夏樹一さん

この文字数でしっかりミステリ+おさしょう、無駄のない構成が光ります。ちなみちゃん&白川さん+嘉島さんでミステリシリーズものとか読みたいです……! 今作のような殺人事件がそうそう起きるのも不吉なので、日常の謎系のほのぼのとか如何でしょうか。もういっそちなみちゃんがお父さんの跡を継ぐしかないです。読書家の少女探偵とかすごくすごく燃えます。


「『殿』という人」風城国子智さん

千古の可愛い一途さと、飄々とした、けれど本当は切れ者で腕も立つ殿が団子を前にああでもないこうでもないとやりあっているのを想像するだけでニヤニヤ。殿の人物造形がすごく好きです。
乱世にあって、支配する者される者、治める者服従する者の構図は力が支配する単純だからこそ惨酷なものですが、殿はその力の使い方、壊すだけではなくて、それを柔軟に受け止めたり受け流したりということをよくわかっている人のように感じました。


「戦場女子」遥飛蓮助さん

四十と五歳児のおじさんの、この場数を踏んだ人特有の余裕よ……! カメラマンってもてそうだし、ブイブイ言わせてきたんだろうなあと思わせるチャラい言動(失礼)とは結びつかない真面目な企画、それを通してしまうプレゼン能力と実行力。するっと人の懐に入り込むスキル、鋭い観察眼も相まって、このおじさんは「掌繋」随一のハイスペックプレイボーイだと思うのですが!(机を叩きながら熱弁)
孤独に頑張る女子高生たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……と思いきや、情に篤いところもあるなんてずるすぎる!(笑)


「いつか花咲く風の野に」奈木一可さん

これちょうすきなやつです……! 好きすぎて頭悪くなるやつです……!
生贄となるべく定められたフロウは、それでもヴァンのことを「私の神様」と全てを捧げようとする。
祭り上げられた英雄ヴァンは血の涙を流しつつも非人道の極みである手段を享受し、そんな自分自身を嫌悪しつつもフロウなしの出撃は考えられなくなっている。彼女へのどんな行いも報い、償いとならないことを承知しつつ偽善を振りまき、その欺瞞に耐えきれず神を求める。
人類存亡の手段を模索する主任は、非人道の果ての技術を手にし、英雄と生贄を引き合わせる。現時点での誰一人として彼を裁くことはできないと確信を持って、人類が生き延びた後の、平和を知るヒトに断罪を望む。
ヴァンと主任が「今ここにいない超越的な存在」を求めているのに対し、フロウだけがヴァンという生身の存在を求めていて、このずれが皮肉でつらくて切なすぎて好き……!!


「微睡のふたり」sunny_mさん

近いからこそ濃い、蜜のようなモラトリアム。溺れる二人が手に手を取って流されてゆくのは共依存にも似て、危なっかしくて見ていられない、と目を塞ぎながらも行く末が気にもなり。
これから少女が大きくなって、いざ、というときに口を挟んでくる人(京子さんの妹とか)は必ずいて、その時二人はどう立ち向かうのだろう。浅い眠りが醒めた時、それでも二人は幸せを選べるのだろうかと近所のオバチャン視点で心が痛みます……。


「お姫様の言う通り!」領家るるさん

モモちゃんがすごくすごく可愛いです! いえ、最初はおしゃまで、先生を困らせて喜ぶタイプの子なのかなと思っていたんですが、読み進めるとじわじわと可愛く思えてきて、「お父さん」でそう来たか! と。そうですよね、アレほんと嫌ですよね。大人の対応が返ってくるところも、周りのびみょーうな空気も。私も言ったことあります。あの気まずさ、今でもあああーって頭抱えたくなりますもん(笑)
そして「頭隠して尻隠さず」の意味、モモちゃんはわかったかなあ?


「夢縁」高麗楼さん

古典由来とのことで、身も蓋もない言い方をすれば「正直に誠実に生きて孝行すれば幸せが訪れる」ストーリーは安心感があって好きです。いい人が不遇のさなかにあるなら救われてほしいし、報われてほしい。そのお話はきっと自分が生きるにあたってのよすがになると思うので。
生き方が昔ほどに縛られない現代であってもそれは同じで、だからこそ人は物語ることを止めないんじゃないでしょうか。


「はるかの海のニューサマー」紙箱みどさん

みかんちゃんと鷹峰の距離感がたまりません。疑似家族は良いものです!
人魚や呪いといった複雑な事情を匂わせながらも、ざっくりした口調とみかん(食べ物)を食べつつのほのぼのした空気のお陰か、どろどろした重さはありません。後半のキャッキャしたじゃれあいは本当にかわゆい。
そして、人魚で呪いと来れば背景も気になります。本編(?)もまたの機会に読んでみたいです……!


「天賦の剣」奈良月君尋さん

固めの文とスピーディな立ち会いのシーンが魅力的。剣術、剣豪もののバトルシーンって重厚にしたいのに書けば書くほど冗長になるし、すっきりさせようと思えば台本のト書きみたいになるしで難しいのですが、回想の挿入位置も描写と説明の配分もバランスよく、唸りながら読みました。おさしょう要素そっちのけですが(笑)剣で分かり合うとか最高じゃないですか!


「蒼燐花岩の魔装具」飛瀬貴遥さん

しっかり者で頑張り屋のレスティを気遣うカヴィウズの余裕にニヤニヤ、砂糖菓子につられたようで案外そうでもないんじゃないの~? というレスティの可愛さにウハウハ、短い中におさしょうエッセンスがぎっしりつまった一作でした。
冒険者か何かなのでしょうか、己の腕一本で世渡りをしてきたふうに思えるカヴィウズが、腕利きの魔装具職人という噂を頼りに訪ねたその人が、まだ幼いレスティであっても見下さずバカにせず、仕事をきちんと評価しているところもまたたまりません……!


「ヒミとハルさん」おみの維音さん

詩子のかぎっ子ゆえの寂しさや孤独が、氷見とハルさんとの交流で和らいでいるのかなと感じました。詩子がいくつなのかははっきりと記されていませんが、小学校高学年くらいともなると、自分の知らないことを知っていて、それを偉ぶらずに話してくれる人って純粋に尊敬の的ですものね。おっさんと少女のやりとりにほのぼのする一方で、ハルさんがバックヤード(?)で何をしていたのかちょっと気になります。「終わったのか?」「一応は」ってものすごく意味深なんですが……!


「竜おじさんと私と世界樹」ななさん

異種族ゆえの感覚の違い、どうしようもできないし善悪の問題でもないだけに、切ないです。世界樹や竜おじさんとの謂われも満足に教えられぬまま天涯孤独の身になって、季節の変わり目を待ち遠しく思う「わたし」が竜おじさんに子ども扱いされてもそれに甘えることなく「もう子どもじゃない」って言わずにはいられないの、本当に泣けます。次の季節が来れば、おとなになれば、何かが変わるのか。ただ待つだけの日々に変化が訪れることを願ってやみません。


「桜と梅」赤柴紫織子さん

お団子作る飛梅が愛おしいです……。「妖を招く血のせいで家族にも疎まれ、何度も死に瀕しながらも薄桜に出会って、己の存在意義に目覚めて薄桜好みのおやつ作りに邁進する飛梅」というところまで一気に妄想して大変幸せな気分になりました。
飛梅と薄桜の世界が二人きりで完結してしまっているのは何となく悲しい気もするけれど、今の二人にとっての一番の幸せはこの形なんでしょうね。



続きはまた後日。もうしばしお待ちください。
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