#テキレボアンソロ 「猫」感想その1

お待たせしました、テキレボ公式アンソロ「猫」感想その1です。
今回は野間みつねさん『「訣別の宵」抄』~つんたさん『泡盛さん・猫』まで。
全部書き終われば公式さんに提出しますので、まとめ読み派の方はもうしばらくお待ちくださいませ。

ちなみに私、猫を飼ったことがないので、猫の生態や性質に触れている部分があればそれは「一般的に言われていること」か「個人的なイメージ」のどちらかで、後者多めかもしれません。つまり「効果の感じ方には個人差があります」。

また、感想テンプレートを配布してくださった森村直也さんに、この場を借りてお礼申し上げます。
いつも有難うございます。


『「訣別の宵」抄』野間みつねさん(千美生の里)

別れを前に語らう土方と沖田。激動の時代、戦場に身をおく者として心構えはできているにせよ、欠けてゆく同志に心動かぬはずもなく。ましてや才能ある若者が死病の床にあるとは、やるせないものでしょう。それでも両者ともに、内心の弱みを見せずに相対し、言葉を交わしている。そこにある矜持が切ないです。


『ニフーを待ちながら』間川るい子さん(羊網膜傾式会社)

ニフーが可愛い。現れては消え、消えては現れる猫。その不思議さ、掴み所のなさがまさに「猫」。触れたがゆえに消えてしまう、その気紛れな気位の高さも。本屋という空間とニフーの存在が織りなす幻想、日常の揺らぎが印象に残りました。


『ネコは、怒っている。』せらひかりさん(hs*創作おうこく。)

むんずと抱きしめてぐりぐりしたい可愛さのネコ。まだ子猫だったのでしょうか、「猫であることが自慢」と猫っぽいところを見せる一方で、雷針の不在ににゃんにゃんするのがかわゆいのです。


『ピートの葬送』凪野基(灰青)

_(:3∠)_


『世界で一番かわいいこ』まるた曜子さん(博物館リュボーフィ)

本編を読了しているので、親戚のおばちゃん気分で幼少期のまおとなあを楽しませていただきました。そうなんですまおはこの頃からしっかり者でぽややんのなあの面倒をよく見てくれて。
地に足の着いた女の子が実際的な努力で望みを勝ち取る、まるたさんエッセンスのぎゅっと詰まったお話でした。
しかしヤコ父、そのネーミングはどうなの……(笑)


『猫の言い分』森村直也さん(HPJ製作工房)

迎えるはずのない変声期を迎えてしまったデザインチャイルド。牡の三毛猫。DNAは不変のものではなく、微細な変異を繰り返して今に至るわけで、変わること、それが生命の本質であるとすれば「永遠のボーイソプラノ」を作り上げ、科学の力で神の領域に踏み込んだIGL社よりも、生命はもっとしたたかで狡猾で不屈のものだったということでしょうか。
生命倫理とヒトのエゴ。重厚なSF、楽しませていただきました!


『なんでもない猫の日』青波零也さん(シアワセモノマニア)

この「なんでもなさ」が愛おしい、日常の一コマ。イケメン不機嫌スキンヘッドがぬいぐるみ作りつつ「にゃーん」て言う絵面を想像するだけで吹きます(笑)
生き生きしたキャラクターと「そう来たか!」とニヤニヤしてしまう掛け合いがたまりません。


『喪に猫を放つ』坂鴨禾火さん(ねこまた会)

タケシが死んだから髪は昇天ペガサスMIX盛りだと派手すぎる。ものすごいインパクトのある導入部、三回くらい読み直してショックから立ち直ってからはラストまで一気に連れて行かれました。ピアノの鍵盤の上を走ってるみたいな、半端ない疾走感と爽快感。


『桜池の鈴』Nagisaさん(Black69cross)

桜と猫と呉服屋の美しい母娘。絵になる……と思いきや何だか怪奇っぽい展開に。呉服屋に起きた一連の出来事は、小町の愛情だったのか、それとも幼くして亡くなった絹江の無念が小町を化け猫にしてしまったのか。触れない方がいい真実かもしれません。


『長靴を履いたスコの恩返し』たつみ暁さん(七月の樹懶)

スコとは何ぞや? と思っていたのですが、なるほど、それでスコ。「ネコ」には「スコ」が含まれるよなーというしょうもないことは置いといて。恩返しに来たはずなのに態度がLサイズのスコ、さすが猫(?)といったところでしょうか。ほのぼのファンタジー。


『猫の王』孤伏澤つたゐさん(ヨモツヘグイニナ)

世間や常識、日常とは切り離された王国の様子がまさに孤高を好む気高い猫であるように感じました。ヒトとは異なる、猫という種に属するいきものたちの王国において、猫ではなく、けれどヒトとも言い切れぬ「男」と「ぼく」は互いの服と人間を剥ぎあって、純粋なけものになってゆく。その背徳感と、そこはかとなく甘美な絶望のかおり。


『奥州平泉猫騒動』ひなたまりさん(時代少年)

さっぱりと気持ちのよい性格の那津。鷹揚な基衡と従者の季春。小夜との出会いを通じて、三人のバックグラウンドが示される構図は長編小説のスピンオフとしてとっつきやすかったですし、故郷を想う那津の描写などから、ひなたさんが彼らをとても大切に思っているんだなあと感じました。歴史は詳しくないのですが、本編も気になります。


『溝になく花』領家るるさん(小金目創庫)

吉原、という語句から連想する、朱と金色の絢爛なイメージが梅井にぴったりで、華やかでしなやか、甚一郎を叱るさまも格好良かったです。飲めや歌えの宴も一夜の幻、酔いから醒めた甚一郎がまっすぐにお竹ちゃんと向き合えますように。


『笑う窓』烏合某さん(シャリヴァリ)

ああ、好きな感じだー、と。とらえどころのない不安定さ、純粋さ。「揺り籠を揺らす手は瞬いて」がいっとう好き。


『僕の守りたいもの』Kyo-asuさん(goodycole)

フミとミカを案じるハルがいじらしくて可愛いです。一方で、運ばれたきり戻らないフミはもしかして結構深刻な事態なのでは……?
ハルの素直さや頑張りが報われますようにと祈らずにはいられません。


『迷い猫の告白』sunny_mさん(白玉)

前回掲載作と同じ世界観ということで、覚えのある人名がちらほらと。「アタシ」のつんとした、でも可愛げあふれるおしゃまな感じがたまりません。


『白猫魔法店』seedsさん(星明かり亭)

肝っ玉魔女猫ペルル、いいですねえ。「ずっと同じ格好をしてたから体が痛くなっちゃった」っていうフランクさ。ラヴィーナに注がれた魔力を上回る愛情を感じます。それでも、いつか魔法は終わってしまうんでしょうか。そんな微かな切なさも含みつつ、いまをエンジョイするペルルはすごくたくましくて、さすが魔女の相棒だな、と思うのでした。


『【まお】』玖田蘭さん(創作サークル綾月)

マオがマオという名前になったのも、マオが死んでしまったのも、まおさんが隣に越してきたのも、そしてコーヒーを振る舞ったら越してしまったのも、恐らくは何の因果もないことなのでしょうけれど、記憶どうしがふと結びつくことに理由なんてないんだろうなあとぼんやり思いました。
七瀬はまおさんとマオを重ねることで、マオにできなかった何かをしたかったのかな、とか。それでもまおさんは、猫のようにするりと姿を消してしまって。温もりがすり抜けていってしまったときの空虚が切なく残ります。


『その男、猫好きにつき』亀屋たむさん(たむや)

水澤君の、突き抜けた真面目さ(?)が面白かったです。その臆病さまでもが「猫が好き」という性格にすべて肯定されているというか。
端から見たら、猫に逃げられようが大したことないとか、別の猫には好かれるかもとか思うわけですけど、当事者の水澤君にしてみれば、今この時が大切なわけで。読みながらニヤニヤしてしまいました。


『黒ねこのしっぽを切った話』壬生キヨムさん(cieliste)

「黒ねこのしっぽを切ったら」という、どことなく不安を抱かせるフレーズから、ページをめくったときの「犠牲」という言葉の重み、「他人ちの子」として結ばれていて。何か大切なものが剥がれ落ちてしまって、その戸惑いや痛みに慣れることができないでいるうちに、自分とは関係のないところで世界が完結してしまう恐れと寂しさを感じました。
黒ねこを撫でたくなる、そんな言葉たち。


『相思相愛』夜海月亭ちーず。さん(ちーず書店)

ド直球の「ねこらぶ」掌編。このストレートさは全編一、二を争うと思われます。作中の「ズキューン!」にやられた読者は多いと見ました。私もその一人ですが。猫が飼いたくなる、猫に会いたくなる、そんな魅力あふれる一作です。


『冷たい雨が生温い』緑川かえでさん(黒の貝殻)

主との関係を、まともではないと冷静に理解しているのにどうにもできない、捻れて歪んだギュスターヴが魅力的。それでも、雨に濡れる猫と彼自身を重ね合わせていたように思えるのですが。


『昨日の猫は、トリの友』ヒビキケイさん(シュガーリィ珈琲)

オカメインコってオウムだったんです!? という動物に無知な人ならではの驚きもありつつ、徐々に距離を詰めてゆくおかちゃんとゴージャスが可愛いです。ともだち、という言葉の暖かみを再確認した気分です。
ところで、キリシマのネーミングセンスは神ですね。


『Kato plenigita』藤和さん(インドの仕立て屋さん)

猫のとらえどころのない雰囲気を感じる、すこしふしぎ・ほのぼの掌編。猫のぬいぐるみというと、どうしてもジブリ版「魔女の宅急便」のアレを思い出してしまうのですが、このお話のイメージとはそう違っていないのでは、と言い訳をしておきます……。


『泡盛さん・猫』つんたさん(みずひきはえいとのっと)

動物(というか猫)変身もの。メインストーリーを知らなくても気軽に楽しめるのがいいですね。猫に変わっても性格は変わらない……のかな。ドタバタコメディ。




引き続きがんばります。
スポンサーサイト