#テキレボアンソロ 感想その3

テキレボアンソロ、感想その3です。
高柳寛さん「恩返し」から桂瀬衣緒さん「300字SS」まで。


感想その1
感想その2
感想その4


【恩返し】高柳寛(KK FACTORY)
ニヤニヤしてしまう面白さ。「おっさん」のキャラがインパクトありすぎて、たかしじゃないけど目が離せません。これがラノベのヒロイン系美少女だったら、たかしはどうしたかなあ(笑)


【のぼりさか】ゆみみゆ(愛的財産)
冒頭の一文から引き込まれました。雪の背負う決意と後悔、そして過去。その重さに負けぬほどの疾走感、痛いほどの切実な願いに、感情移入しながら読んでいました。山頂を越えて、そこで雪と翔が出会った物語の結末も素敵。


【小さな食堂にて】藤堂美香(白玉)
長い時を生きる語り部と人とのラブストーリー。登場人物のネーミングもあってか、描写が色鮮やかです。常葉と蘇芳のラブの傍らで、時雨と珊瑚もラブいように思えたのは私だけでしょうか……。


【春の灰】望月あん(border-SKY)
地の文が端整で艶やか。静謐で乾いているのにどこか官能的でもあって、有機的なのに無機的な……たとえば「骨」のようなイメージ。桜の終わりかけの季節だというのに、すべての色が褪せたように感じられました。兄の喪失による主人公の心象ゆえでしょうか。そして、主人公がねえさんのことを密かに想っているように読めてしまったのですが……。


【そこに在った風景】谷町悠之介(ナキムシケンシ)
MMORPGは遊んだことがないのですが、煽られ罵られ嘲笑されても初志を貫く主人公がカッコイイです。なかなかできないですよ、これは。


【太陽になんてなれなくても】前転リネン(リンネルフランネル)
気になっていた元クラスメイトと兄が結婚、というだけでもショックなのに離婚の知らせを聞いて動揺しないはずがないですよね。趣味を趣味として続けること、偏見を偏見と認めること、その勇気。


【奇譚・夢守人黒姫 再会の桜】服部匠(またまたご冗談を!)
既存作の番外編ということで、世界観やキャラクター紹介、アクションシーンまでがぎゅっと詰まった一作。黒姫と青子の一筋縄ではいかなそうな関係もすごく気になります……!


【秋子さん】にゃんしー(おとそ大学パブリッシング)
校舎に四角く切り取られた空、灰色の思い出の中にあって、秋子さんだけがくっきりと鮮やかな印象で描かれる。主人公にとって秋子さんは安全地帯だったんだろうなあと思います。モラトリアム、そろそろと様子を伺うようにおとなになってゆく少女たちの繊細な、ときに狡くもあるいっとき。


【美少年興信所~語りかける我ら・抄~】鳴原あきら(恋人と時限爆弾)
衝動を押し込めた悪ふざけ、だったはずが、思いがけぬ再会と、満潮音に導かれるようにして開かれてゆく新しい扉。知恵蔵の鬱屈した思いが青春に、情熱に形を変えていく。何か新しいことをしたいとうずうずするような作品でした。


【まほろば町保育園】アヤキリュウ(ここち亭)
アズサ先生の失言、大地先生とお残りのチサちゃんとの交流。一度読み終えてほろっとしながら読む二回目の味わいがとてもとても、いい。チサちゃんの「だいち先生もまだ遊びたいの?」など、二回目だからこそ刺さってくる仕掛けがたくさんです。


【かぼちゃのタルト】青波零也(シアワセモノマニア)
おいしいものを食べたときのように、思わずニヨニヨしてしまう作品。おいしいもの好きなアキの作ったかぼちゃタルト、おいしいに決まってます! 甘味が彩る甘くて爽やかな短編。


【ナイス・トゥー・ミー・チュー】ムライ タケ(そりゃたいへんだ。)
うっかり死んでしまったタカハシ。完全に死んでしまう前に誰か一人にだけ挨拶をすることができるが、挨拶をしたい人もすぐには思い浮かばず……。タカハシの生きざまはともかくとして、その思いが昇華されゆくラストシーンはすごく素敵。ハムスターは助けられなかったけど、空を見上げる子どもらの幾人かを、彼女は救ったのかも。


【あの時負けた】迫田啓伸(侍カリュウ研究所)
高校野球もの。まさかの敗北と再戦、グラウンドに立つ前の、「素の」高校球児たちの交流。熱くて爽やかな一編。


【再会】庭鳥(庭鳥草紙)
ジャパネスクはむかーーし読んだ記憶があるけどほとんど何も覚えてません。それでも、氷室さんの軽妙な文体が懐かしくなるような、朗らかでやさしい瑠璃姫の語りでした。随所に見られる、歴史物の書き手さんらしい表現が上品で新鮮に感じられました。
余談ですが、「筒井筒の仲だった」、そう、筒井筒は正義。


【医者は白衣を着ていた(【零点振動】番外編)】宇野寧湖(ヤミークラブ)
長編サイキックミステリーの番外編とのこと、こ、これは本編が気になります。クールでハードボイルドな切り口、甘すぎず、けれど含みをたっぷり持たせた羽鳥と槇の関係性。こんな、「天才肌の精神科医」に「君の病理を分析するぞ」なんて言われてドギマギしない人がいるでしょうか!!


【三日月の夜に。】伊織(兎角毒苺團)
猫又の登場あたりから、「すこしふしぎ」かな、と思っていたら「とてもふしぎ」でした。謎の生命体(麒麟……?)、五年後の再会と恩返し。天変地異を目の当たりにしてのあの落ち着き、語り手さんもただ者ではないとお見受けしますが、明けぬ夜はなく、世界は凪へと巡っていて、ふと肩の力が抜けるような気がしました。


【薔薇が運んだ幸運】kiyonya(招福来猫)
人魚の国、という設定に心惹かれます。両親の不仲に心痛めるジタル、ふとしたきっかけで出会った人魚の王子ピート。ジタルがピート王子の話し相手に、という幸運は、きっとジタルの誠実な生き方に対するご褒美だったんでしょう。本編はBLとのこと、これはきっと甘くていいお話……!


【ご冗談でしょう、ラインズマンさん】わたりさえこ(ナタリー)
不条理と難癖の連鎖。スミス、ラインズマンという名詞は、この不条理が誰にでも当てはまるものだと思わされますし、実際こういうこと「あるある」ですよね。そんな負の連鎖を断ち切るのは……。読後感爽やかな一編。これも大好きなお話です。


【明日また再会しよう】姫神雛稀(春夏冬)
年若い起業家、学生ベンチャーならではの熱気と貪欲さむき出しの夏文と、そのストッパーながら内心はよく似た彩斗。でも、パーティで再会した瑠知の扇情的なファッションに焦る彩斗は「おとこのこ」という感じがして可愛いです。前途洋々な若者たちの、煌びやかな夜。


【300 字SS】桂瀬衣緒(SiestaWeb)
ついのべほどストイックではなく、けれどテクニックを要する300字短編。序破急、というか、短い物語ゆえの展開の小気味良さ、キレとオチを楽しめる5編。



アンソロはひとまず読了していますので、ラスト1/4も頑張ります。お待ちくださいませ……!

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