#テキレボアンソロ 感想その2

お待たせしました、テキレボアンソロ「再会」の感想その2です。
ろくさん「時告げ台の濡羽鴉」から山本ハイジさん「ある画家、あるいは精神の渇き」まで。

感想その1
感想その3
感想その4


【時告げ台の濡羽鴉】ろく(階亭)
前回のアンソロ掲載作のその後のお話。今回は鵺とのバトル! 自らの足を、戦闘力を、何よりの悦び、楽しみを奪った鵺との対決、悲壮さではなくて鵺を狩ることへの渇望が滲むところがたぎります。夜と血と硝煙のにおいの妖艶さ。


【ここから始まる】藍間真珠(藍色のモノローグ)
己の技量に自信があるからこそ、井の中の蛙状態だったことを知って受け入れ、戸惑うティット少年が素直で可愛いです。自らがゼロであることを知ったからこそのはじめの一歩。壮大な物語が感じられます。


【死神】雨宮小夜(色漆)
「私」は事故から生き延びたはずなのに、死に損ねた……というか、彼女に導かれ損ねた悔恨と、来るべき日を心待ちにするような期待感は、死の枠組みから外れたところへ至るのが自然なことなのかもしれません。なるべくして「私」は死に神になったんでしょうね。


【八月七日の夜に】汐江アコ(まりあ骨董)
か、可愛い……! そして甘酸っぱい青春ラブストーリー。私は七月七日が七夕の文化圏ですが、梅雨の最中のこと、雨・曇りばかり。八月七日は晴れて逢瀬の叶うことも、願いの叶うことも多いのかもしれません。


【カラフルクッキー☆スーパーイリュージョン】ひざのうらはやお(そりゃたいへんだ。)
放送部、校内放送を牛耳ってるんじゃ……? ひいては、学校を裏から支配してるんじゃ……? とうっかり思ってしまうほどハイテンションな学校放送。むしろラジオ。かなことリスナー(学生!)の再会、ということ……なのかな。


【彩会】紗那教授(教授会)
これぞ、ダイレクトマーケティング! ステマの三文字を鼻で笑うがごとき威風堂々たるマーケティングに、ただただひれ伏すしか。圧巻です。


【おしゃべりな女の子】瑞穂檀(チューリップ庵)
マリコがすごく可愛いです。健気で家族思いで、お人形だから言葉を発することはできないけれど、感情豊かで。だからこそ切なさがぐっと迫ってくるのでしょう。


【繰り返すは安易な終わりの類型】空想金魚鉢(MATH-GAME)
このダークで救いようのなさそうな歪んだ世界観、大好きです……! 長編のバックグラウンドなのでしょうか。兵器として消費される少女の無垢な祈りが、欺瞞に満ちた鈴音を苛む。本編があるなら、とことん救いのない、あらゆる希望や祈りや願いをねじ伏せるような展開希望です……!
(余談ですが、往年のラノベ「ブラックロッド」三部作を思い出しました)


【百年目の再会】野間みつね(千美生の里)
軍からマークされるほどの超能力者で不老の「俺」、決して幸せな人生ではなく、辛い思い出が積み重なる中から現れた、眩しく光輝くような青春の一コマ。「俺」の行く末が気になります。


【つがい】篠崎琴子(てまり舎)
美しい描写と、心をひっかくような傷が印象的な一編。この雰囲気、大好きです。甘やかな幻想をかたくなに守っていた少女、けれど現実は無情に、無常にうつろいゆくもので。幻想に拒絶された少女の悲痛な叫びがじんじんと響きます。


【はい、題名は、「再会」にしようと思っています、これがその】Pさん(崩れる本棚)
流れる、飲み込まれる、奔流、ライブ感と疾走感、疾風怒濤の連想ゲーム、思い出したかのようなトリビア、唐突なようで計算され尽くしたカウントダウン、甘いアイスコーヒーのように増してゆく密度、急速に収束する文字列は世界の終焉にも似て。


【嘘と箱】南風野さきは(片足靴屋/Sheagh sidhe)
エイプリルフールよりももう少し「嘘をついてもいい」が日常に溶け込んだ一日。哲学的なような、謎かけのようなことを言う少年(?)は切り貼りされたような非現実感で「ぼく」を困惑させる。嘘、というスパイスと小悪魔的存在の少年が独特の手触りを残すお話。


【夏風の向こうに】青銭兵六(POINT-ZERO)
都会に憧れ、地方から出てきた「僕」。厳しい現実に揉まれて心身ともにぼろぼろになった「僕」を、懐かしい光景が無言のままに受容する。両親の思い出、ボタンを押さないと開かない電車の扉。再出発のときはすぐそこに。


【自然光の貴婦人】森村直也(HPJ 製作工房)
地底都市から地上へ、そして美術館へ。暗いところから光射す明るい場所へ老婦人に導かれるうち、読み手と植村とが重ね合わされるようで、幼い心に憧憬と陶酔とをもたらした絵画との再会が、美化された思い出に彩られた初恋を反芻されるほろ苦さを経て昇華されるカタルシスを余すことなく味わえます。


【Re-Union In The Sky】綾瀬翔(skyparametric)
先の「繰り返すは安易な終わりの類型」にどこか似た設定で蘇り、敵対を余儀なくされるかつての恋人。恋人が羽をもがれ墜ちる悲しみを憎悪に塗り替えるその手口、立ち向かうエースパイロット・ホール。ヒコーキもの好きにはたまりません。そして、いつ聞いても交戦宣言はかっこいい。
(余談:次回以降のテキレボでエースコンバット二次小説とか再録発行したら欲しい、って方いらっしゃるでしょうか……)


【勿忘草 ~My good old sound~】蒼井 彩夏(風花の夢)
前回アンソロと同じく、魔女ソフィアが人々の記憶を優しく揺り起こすシリーズ。創作もですが、芸事は始めたての真摯な情熱を忘れないこと、重要ですよね。小手先のテクニックや増長、手抜きを覚えるとすぐダメになってしまう。自戒も込めつつ。


【平和なら笑っていられる今宵なら六等星も綺麗に見える】笠原小百合
月のない夜の暗さ、満天の星空、街灯に照らされる表情豊かなミホ。情景が易々と想像できるがゆえの、キュッとする青さが懐かしい。ささやかな小さな彼らの世界、その平和がいつまでも守られますよう。


【土中からの色】江間アキヒメ(【日本史D】編纂部)
(歴史詳しくないので、ウィキペディアさんにお世話になりつつ)これはもしや、にわかに話題の日本住吸血虫の事案……? 史実を下敷きにしつつ、真相は(まさに)闇の中といったホラー仕立てになっています。ラストシーンも、果たしてそれは……と、いい意味でのモヤモヤが拭えません。


【僕の上司と先輩】真乃晴花(Natural maker)
今回もやらかしてくれます、副長官。ルーとのやりとりは高度な論理戦のような、単なる屁理屈のなすりあいのような。ハーリィのぽわんとした明るさと苦労人気質ににやにやしてしまいます。


【遠き日に、白はいざなう】耀華(旅人たちの紡歌)
剣の勝負で勝ち逃げされたかたちのウェルバーニア。魔力判定会議で選抜され、特殊なのは自分だと思っていたのに、そこでも選ばれたのはフーリエスで、若さゆえの自信過剰がもたらすその悔しさと羞恥。それをばねに約束を果たし、再会を遂げた二人を照らす陽光の清々しさ!


【ある画家、あるいは精神の渇き】山本ハイジ(ikuraotome 出版)
冒頭の一文がすべてを表しているような、創作活動が持つ暴力的なまでのパワーに唸る一作。妖艶な魅力を持つ影次は、妻の喪失を埋めるばかりか、画家としての「わたし」の転換点になるのでは。そんな昏い予感を秘めた物語。



ようやく折り返しです!
どんどん頑張ります。後半に掲載されてる方、お待たせしてすみません……。

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