テキレボアンソロ「はじめての××」感想(3)

Text-Revolutionsアンソロジー「はじめてのxx」の感想その3です。

その1 「初めての革命」~「先輩の言うことは」
その2 「栖のはなし」~「「さよなら」も最早面倒くさい」



「さよなら」森村直也さん

こちらも大好きな作品。世界の内側に「私」がいるようでいて、「私」がいるからこそ世界が存在するとも言える。世界に許されたいか、世界を許したいか、という裏返しの問いの末の決断。淡々と語られるがゆえに、許すということの残酷さが際立ちます。


「はじめてのダンス」育美はにさん

恋心と芸事。昔からテーマになってきましたね。背景などは想像するしかないのですが、リアにはジョーが必要なのではないかなと思います。ジョーは自分自身のことをリアの成功の妨げになると思っているようですが、恋もまた経験のひとつとして。


「空の青さは」凪野基

_(:3∠)_


「外の世界の話」藤和さん

まさに運命のクッキー! チーズクッキーへの熱い思いもさることながら、「今までクッキーに向けられていた気持ちが、彼の方を向いた」っていう結びの一文がすごくいいなあと思います。それまで冷静だった地の文に、いきなり違う色が混じったような。


「初めての同人誌」小稲荷一照さん

私にとっての「初めての同人誌」はどんなだっただろう、と懐かしく思い出しながら読みました。出来栄え、売れ行き、感想贈答、いろいろ思うことはあれどその試行錯誤の過程が楽しいものですよね。ところで紅茶の話も気になります。


「猫珈琲喫茶」猫春さん

不思議の国のアリス的な、と思っていたら何と、そういうことでしたか! こちらもラストでやられた! と嬉しい悔しさを味わえる作品です。作中の登場人物(?)たちを見守る視線と作品を通して感じられる優しさにほっこり。


「枯らす女」朝来みゆかさん

慌てて掃除をする春菜の様子、枯れたカランディアを目にしたときの焦り、LINEの何気ないやりとり。ささやかな日常が丁寧にいきいきと描かれています。これから人生を共にするふたりの「はじめて」が農場育成アプリって、すごく微笑ましいです。


「初めての友だち」緑川かえでさん

ダーク。すごくダーク! ギュスターヴとセレナーデ、絶望こそが快楽である彼らにとって、友だちというのはおままごとのようなものなのかもしれないけれど、そのつながりを否定してしまうと、彼らを人たらしめている支えが失われてしまうのかな。


「奇蹟を抱く」桜沢麗奈さん

凛とした桜の姿勢、生きざまが美しく、眩しい作品でした。芯のある女性はすごく素敵。桜が持つ、瀬里との分かちがたい絆は由埜から見れば単なる妄執でしかないのかもしれないけれど、いつかその奇蹟の種が芽吹く日が来ることを願わずにはいられません。


「約束してね」藍間真珠さん

間口の広いやさしめSF。でもしっかりSF! お父さんの仕事を誇らしく思っていて「宇宙に絶対はない」ことを言い訳だと言いつつ、心の奥底では理解していたからこそ、素直になれない部分があるんだろうなあ。


「初めてのラブレター」橙河さゆさん

自分宛てのラブレターに「宛先間違ってますよ」とメモを添える高橋君も、宛名も差出人も書かずに置いてしまった委員長も、初めてのラブレターに緊張し、落ち着かなかったんでしょうね。そんな浮き足立った二人がとっても可愛い!


「当世乙女初乗」蒸奇都市倶楽部さん

漢字多めの固い地の文とスチパン風の世界観がすごく合っていて、個人的にすごく好きな感じです。乗り物好き、地の文好き、描写好きにはたまらない作品でした。好奇心が強く行動力のある楓が、彩度の低い背景からくっきり浮かび上がるよう。


「転機 ―拾遺 闇胡蝶事件帖―」島田詩子さん

御前かっこいい! おとこまえ! 多少の下心はあったようですが、穂積くんがころりと(?)いってしまったのも納得の懐の深さです。御前や人のよさそうな長田さんが「闇胡蝶」として活躍する背景も読んでみたいと思わせる、躍動感のある作品でした。


「初めての永遠」鳴原あきらさん

複雑な姉妹関係、と思いきや、前半の会話部分に後半の伏線が全部含まれていて、一読した後すぐに二周めを読んでしまいました。彰子と芙美の永遠についてのやりとりもしっとりと艶めいていて素敵です。初めての永遠、というタイトルに思いを馳せつつ。


「はじめてのアンソロジー」藤木一帆さん

うわあどえむ……と思いつつ、そのお題・裏お題を自分ならどうするか、と考えてしまうあたり私もどえむの一員なのか、それともモノカキの性なのか。アンソロジーは書くのも読むのも刺激になっていいですね。お題だけでも見に行ってみようかな……(沼)


「悩ましい僕の、最初で最後の解放」りささん

何重もの入れ子構造、そしてループ。作中の毒や棘にウウッとダメージをもらいつつも、こういうメタ構造はすごく好きです。革命に始まったこのアンソロジーの終幕に相応しい、見事な解放(?)でした! 狙って書いたわけじゃないというのがまた恐ろしい。この偶然もまた、アンソロジーの醍醐味ですね。




最後に。
ボリュームたっぷり、読み応えのある一冊でした。
どの作品も違うカラーでちっとも飽きずに読めますし、WEBカタログと併せてサークルチェックに役立つのではないでしょうか。
文章系サークルさんにとって、文章でのサークル紹介はもちろんのこと、実際の作品を読んでもらえるのは何より強力な宣伝です。
この機会をくださった運営さまに感謝を。
拙く、短い感想でしたが、書き手さんと読み手さんをつなぐ一助になればと思っています。
当日、直接イベント会場に伺うことはできませんが、イベントの成功をお祈りしています!



その1 「初めての革命」~「先輩の言うことは」
その2 「栖のはなし」~「「さよなら」も最早面倒くさい」


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