テキレボアンソロ「はじめての××」感想(2)

Text-Revolutionsアンソロジー「はじめてのxx」の感想その2です。

その1 「初めての革命」~「先輩の言うことは」
その3 「さよなら」~「悩ましい僕の、最初で最後の解放」



「栖のはなし」南風野さきはさん

繊細で緻密に描かれた絵本を読み解いているような印象。描写の密度が圧倒的で、何度も行ったり来たりを繰り返すと、夏の夜の森に囚われてしまったように思える。逢瀬のシーンは美しく、同時に淫靡でもあり、人ならざるものの妖艶さにぞくぞくします。


「CANDY×GAME [宵月の森] 出張版」桂瀬衣緒さん

シリーズものの出張版とのことですが、つかず離れずの腐れ縁っぽい二人が可愛いなあとニヨニヨしてしまいました。強気なのに怖がりな悠里も、公隆の「嘘」も肝試しっていう舞台にぴったりで。これは本編が気になる……!


「セカンドキス」ひじりあやさん

夏の夜空の下、缶ビール片手にふたりきり。これって、ビールがよけいに苦く感じてしまうシチュエーションですよね。高校二年生っていうと、あれもこれもと手を伸ばしてしまういい意味で貪欲なお年頃。片思いのじわりとした苦さと、さっぱりしたポジティブさ。


「僕のお仕事」真乃晴花さん

今後苦労に苦労を重ね、戸惑い狼狽えるハーリィくんの姿が目に浮かびます。「仕事をさせるのが仕事」や「土足だと怒られる」などコミカルなやりとりと、副長官さんの屁理屈が面白い。これから(本編で?)どんな屁理屈が飛び出すのか、気になります。


「ラ・ドルチェ・ヴィータは知らない」まるた曜子さん

十歳差! というだけでたぎります。会話文がすごくナチュラルでこなれている感じで、わりと生々しい話をしているのに嫌味じゃなくて。ハツカノ、歳の差、ということはこれまでにも色々あったと推測されるわけで、こちらも本編が気になる……!


「みっちゃん」堺屋皆人さん

最後にやられました……! いろいろやられました……! うわあ完敗だ。でもでも、本当に○○なら(一応伏せます)鬼太郎を「幼い時に読んだ」ってことはないだろうし、って違和感はあったんですよ。何を言っても負け惜しみにしかなりませんが!


「勿忘草 ~初めてのお客様~」蒼井彩夏さん

互いを思いやる叔母と姪。直接の血のつながりがなくとも、親子の情は確かに存在していたのだと優しい気分になりました。初めてのお仕事に関する後悔を抱いてきたソフィアも、これをきっかけに魔女として成長するのでしょうね。


「最近のアレは、はじめるまでがハードモード(はじめての次世代機)」こくまろさん

これすごいわかる……! 箱360を買って遊んでしばらく放置したのちに再開したら似たような状況になってギャー! ってなったことを思い出します。こちらはゲームソフトで遊びたいのであってそれ以外のことは! 思い出し笑いで苦しかった作品。


「初めてのパワーストーン」セリザワマユミさん

これは決して「なんてことのない日常」ではない気がしますが……。フィクションでしょ? と言うよりフィクションですよね? と確かめたいです。この調子ではお墓を探し当てた後もいろいろあったのでは。笑いとホラー(オカルト?)の配分が絶妙です。


「伸縮小説『初めての時間泥棒』」氷砂糖さん

このアンソロ中でいちばん好きかもしれません。仕掛けも、ストーリーも。100字でもちゃんとした掌編小説なのに、言葉を付け加えていくことでどんどんと深みと奥行きが増していく。言葉って、物語って、すごいなあと感嘆せずにはいられない一編です。


「litte Lady ~初めてのプレゼント~」天川なゆさん

幼い見た目を気にして尖った態度を取り続ける「彼女」、彼の穏やかさでこれからはどんどん丸くなるのかな、と二人の未来を想像してしまいます。まるきり「他人のコイバナを楽しむ姿勢」ですけども……!


「梅田はダンジョン」水城麻衣さん

梅田はダンジョンです(断言)。すぐ様変わりするし、三次元的つながりもわかりにくいし。泉の広場のあの独特の「浮いた」感は、どこかとつながっていても不思議ではないなあ、と地元民の雑感混じりに読みました。鳥たちの人情味あふれる大阪弁が可愛い。


「初めてのしごと、そして日の出」谷町悠之介さん

ラッパを吹き損じたらどうなるのかしらとか、時間が巻き戻された記憶(意識)があるならその重複はとかつらつら考えてしまうのですが、時間ってファンタジー向きの素材ですよね。新しい朝にふさわしい「はじまり」を感じさせる作品でした。


「ファースト・エンカウント・イン・コースティクス」鷹無冴子さん

刺すような真夏の太陽、きらめくプールの水面、その奥に潜む何か誘惑的なものに惹かれてプールに飛び込む「俺」と水泳部の少女のエンカウント。とても短い作品ですが情景描写が鮮やかで、短編映画のよう。ふたりの間に散る火花まで見えるような。


「それは最初で最後の、嘘」ありすうちゃさん

何気ない一言を気にして髪の毛を伸ばしてしまったり、でも、誘われたからではなく自らの意志で行動したいと思ったり、リカードの女心が可愛かったです。片思い中の女子って本当に可愛い! 恋人同士もいいけれど、その一歩手前もまた、味わい深くていいんですよね~。


「「さよなら」も最早面倒くさい」小高まあなさん

隆二とマオのじゃれあいが可愛かったのですが、後半のシリアス展開にほろっときました。面倒くさい、の一言に隠されたたくさんの想いに、本編で語られているのだろうふたりの背景を垣間見たように思います。





(作品タイトルと作者名、サークル名が公式ページにあることに気づかず、目次見ながら手打ちしてしまいました; 気をつけたつもりではありますが、入力ミスなどありましたら一言教えていただけると幸いです)



その1 「初めての革命」~「先輩の言うことは」
その3 「さよなら」~「悩ましい僕の、最初で最後の解放」




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