テキレボアンソロ「はじめての××」感想(1)

Text-Revolutionsアンソロジー「はじめてのxx」の感想その1です。


その2 「栖のはなし」~「「さよなら」も最早面倒くさい」
その3 「さよなら」~「悩ましい僕の、最初で最後の解放」


第1回Text-Revolutionsの参加サークルさんによるアンソロジー、「xx」の部分がちっともかぶってないことに素直に驚きました。
ほとんどの方が「はじめまして」なので、新鮮な気持ちで読めました。
読み手としての感想と書き手としての感想が入り混じっていますが、ご容赦ください。



「初めての革命」クロフネ三世さん

確かにあの扇風機(?)革命は革命的でしたね……と当時を懐かしく思い出しつつ。革命によって簡単に価値観がひっくり返る世の中はまるで「大富豪」のようにゲーム的で、まさに不条理。シニカルなニヤニヤ笑いもあって、冒頭を飾るに相応しい作品でした。


「争いの終わりに」高柳寛さん

ゾンビもの! 「僕」だけが唯一の生者、っていう終末感ひしひしの舞台なのに、どうしてか悲壮さはなくて、不思議に澄んだ空気を感じます。その中で「僕」に音楽ブームが(ビートルズ!)来たのは、何だか意味深なような。ラストシーンもすごく印象的です。


「湯気たつベランダ 見上げた夜空」世津路章さん

小さい妹の前で必死に「お兄ちゃん」するたろくんのまっすぐさと、彼を見守るまいねえちゃんのやさしい視線にきゅんきゅんします。言葉の選び方ひとつひとつが柔らかく温かくて、吟味されているなあと感じました。紅茶のようにじんわりとぬくもりが広がる物語。


「初めての恋 あるいは、恋する思考実験」添嶋譲さん

添嶋さんの作品は言葉がシンプルだからこそざっくり食い込んだり、ぶわーっと揺さぶられたりするのが魅力だなあといつも思います。甘酸っぱさも逆剥けをひっかくような苦い痛さも、全部まるごとひっくるめて、宝物のように思えてしまうのです。


「夜の一頁」野間みつねさん

少年はこの後、すっごいおっとこまえになるんだろうなあ、と確信を抱きつつ読みました。執筆されてる長編では彼のことが語られたりするんでしょうか。でも、男を成長させるのは女だよなあ、とも。


「初☆パーティー」ななさん

「見た目美少女の」という一言がイーシュさんのすべてを物語り、アレスさんの変態ぶり(失礼)も端的に伝わってきて、すなわち常識を備えているだけ損をするパターンですね……。「僕」の今後の苦労が想像されるとともに、デカイこと成し遂げる面子のような気がします。


「はじめての高尾山」広川伊砂緒さん

普段の、何でもない日常と非日常。その境目はほんの紙一枚分しかなくて、あるいは境目なんかないのじゃないか。そんなことを考えた作品でした。日常があるからこそ非日常と共存していられるのかも。


「初めての海外渡航」高森純一郎さん

私は海外に行ったことがなくて、海外でのフィールドワークなどのお話を伺っても憧れと共にうんうん頷くことしかできないのですが、上橋菜穂子さんのエッセイにも通じる好奇心とバイタリティを感じました。経験が作品になるって、本当に憧れます。


「まほろば町駅前交番」アヤキリュウさん

ラストシーンで鷲掴みされました。読み返してみると、「どうしてこの人はこんなに――ウザいんだろう」の「――」のように、心情描写が丁寧に織り込まれていて、緻密だなあとひたすらに唸っております。「ただのいい話」で終わらない爽やかさと力。


「玉雪開花」神楽坂司さん

小樽市内の精緻な描写に雪国の夜の鋭さを感じ、観光地としてしか知らない小樽を故郷とする律子の独白によって、同じ景色が少し色褪せて見える。この地の文の運びがすごく好きです。変わらないものなんて何もない、それは土地も人も同じ。


「初めてのハイブリッドポエム」にゃんしーさん

円城塔さんに似た、傍若無人さ(褒めてます、念のため)。文字は単なる文字でなく、テキストは単なるテキストでなく。見て楽しい、読んで楽しい作品。

余談)アンソロの表紙を見た家人が「ハイブリッドポエムって何と何のハイブリッド?」と言うので「秩序と混沌」と吹いておきました。


「はじめての風邪の日」青波零也さん

凸凹コンビのかけあいがすごく楽しくて、あれラブ? ほのラブ? とドキドキの展開の後の一言「やだよめんどくさい」がすごくきれいにオチていて、甘いだけじゃない奥深さ。こういうささやかなやりとりが、登場人物に深みを持たせるんだろうなあ。


「狂い子ふたり」ろくさん

短い物語の中に、夜の深さや鵺に魅入られた幼子の狂熱が凝縮されていて、本編への導入としてすごく魅力的な作品だと思いました。紹介のところで仰っていた「キャッキャウフフ」も見たいですが、これはこれで一種のキャッキャウフフなのでは……。


「はじめての桃太郎」トオノキョウジさん

確かに、大きな桃が川を下ってきたら見送るのが正常な反応なような。その後の息もつかせぬめくるめく展開、一大スペクタクル。遠投を終えたおばあさんが刈った竹の中に小さい女の子がいたりしたらどうしようと思っていましたが、杞憂でした。


「Do you like Strawberries Pill?」ひよりさん

嶽本野ばらさん風? と思いきや、「無向ミズ」という彼女の氏名が示す通りの超展開、これはもしや「ヤンデレ」担当!? いやいや、すごく勢いのある作品でした。「先生の影は、まるで夢の架け橋みたい」なんて描写が乙女なだけに、その落差が不気味。


「先輩の言うことは」姫神雛稀さん

高校生というにはやや大人びた二人の、でも初々しいやりとりが可愛い。老舗和菓子店という場所がらか、登場人物たちに品があるのも素敵です。撮影シーンの「一枚目は固く、二枚目は逃げた。/三枚目で、とても綺麗に笑った」がすごく好き!



(作品タイトルと作者名、サークル名が公式ページにあることに気づかず、目次見ながら手打ちしてしまいました; 気をつけたつもりではありますが、入力ミスなどありましたら一言教えていただけると幸いです)



その2 「栖のはなし」~「「さよなら」も最早面倒くさい」
その3 「さよなら」~「悩ましい僕の、最初で最後の解放」



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