2017年10月の記事 (1/1)

11月のイベント参加告知(2)

続いて11/5開催のCollage Event Ade10、こちらは直参です。
スペースは【F2 灰青】、4階の入口から左手の奥です。(荷物多いのでありがたい……)
過去二回、委託参加でお世話になり、とても居心地の良さそうなイベントだと思っていたので、直参できるのがとても嬉しいです。
諸般の事情により文庫本中心の縮小展開ですが、去年の委託にはなかった本もありますし、企画にもたくさんお邪魔しますのでどうぞ遊びに来て下さい。

お品書きはこちら。大きいものと試し読みはpixivにてどうぞ。
Ade10お品書き

10月に文庫判で再版したスチパン風ファンタジー「魔法使いは飛行機械の夢を見るか?」は旧版から少しだけ手を入れて、シャープにしてあります。読み返すとすごくいい話でした……。好きと仰ってくださる方も多いですし、3万5千字程度ですのでそれほどしんどくない分量で纏まっていますので、長編はしんどいけど……という方はぜひ。
手を繋いで頬を染めるレベルのボーイミーツガールです\(^o^)/

短編集はほどほどに持ち込みますが、長編「プリズム」「凱歌」は持ち込み1ずつです。見本誌でよければ頒布しますが、確実に欲しい方はお早めにどうぞ。


そして、秋発行のテーマアンソロジーをお預かりしています。
Ade10お品書き2

画像右側の2冊、「竜と人」をテーマにした、小説×イラストのコラボアンソロジー「心にいつも竜を」(ここドラ)と、鶏の唐揚げをテーマにした異色の短編飯テロアンソロジー「文芸アンソロジー トリカラ」です。

「心にいつも竜を」には、「世界の半分をお前にやろう」というくだんの伝説が息づく世界を描きました。ほんのりスチパン風味の「末裔」です。まのいさんがダイナミックなイラストを添えて下さいました。別冊のイメージノート(こちらは非売品ですが展示します)に寄せてくださったコンセプトアートがめっちゃ素敵で……!!
主催の呉葉さんがこれぞ、と思う竜の書き手/描き手を集めた渾身の一冊。ぜひご堪能下さい!

「文芸アンソロジー トリカラ」は主催・氷砂糖さんの「トリカラ食べたい」の思いが実った一冊。こちらも公募ではなく、氷砂糖さんのトリカラ熱によって選ばれたシェフ(?)たちが、自分の信じるトリカラを持ち寄りました(??)
表紙の飯テロ力が半端ないです……。帰りはみんな、トリカラ食べてね。
私は月で働く青年が「トリカラたべたい」と歌う、ふんわりBLSF「月のトリカラの人」を寄せました。

※個人誌、アンソロジー問わずお取り置きも可能です。Twitterでもサイトのメルフォでも何でも構いませんので、お声がけください。


それから、企画参加について。欲張りすぎたかな……とも思うのですけど、滅多にない機会を満喫すべく、3つの企画に参加しています。

300字SSポストカードラリー in Ade10】
テキレボでの有志企画の出張版です。私は10/28開催のテキレボ6で配布する「鋭利な希望」に加え、Ade合わせ発行の「アップルパイ狂騒曲」の2種を配布します。もらいに来て下さいね。「アップルパイ狂騒曲」は自宅プリンタで印刷してるので数がそれほどなく、継続頒布はお願いしないつもりです。
ネットプリント配信とweb公開しますので、Adeに参加されない方もご覧頂けますと嬉しいです。

【折本フェア】
前の記事で触れた、zine展に出品する折本3種で参加します(もともと折本フェアが先にあって、zine展にも乗っけたかたちです。日にちが近いのに有料・無料が混じってますがご理解下さい)。

朝:「Morning Glory」倦怠期を知らない恋人たちの朝。未来を視る魔女と機械の体の青年のお話。
昼:「ソーダ水の午後」政略結婚から始まる恋。2018年1月発行予定の長編「双つ海に炎を奏で」の主人公ののろけ。
夕:「夜汽車のあと」最終の汽車が発った後、夜の中で奏でられるヴァイオリン。「Linkage」(「ポッケ」収録)のルーイとナタンの邂逅。

という感じの、どれも3000字程度の作品です。字は小さいです。
3種ともネットプリント配信、終了後は個人サイトにてPDFを公開予定です。5階の折本フェア会場にて配布していただくほか、自スペースにも少し置いておきます。

【幻想蒸気回廊】
5階G6「からめるわんこ」さん主催のスチームパンク作品スタンプラリーです。訪問で1スタンプ、お買い上げで2スタンプ差し上げます。
2スタンプ対象商品は「魔法使いは飛行機械の夢を見るか?」「ポッケ」「ホクスポクス」の3種です。
ふだんあまり小説を読まない方、短いのがいい方→「ポッケ」
読むけど長いのは苦手、作風がわからない→「ホクスポクス」
そこそこ読む→「魔法使いは飛行機械の夢を見るか?」
という感じでしょうか。得意/苦手ジャンルがありましたらご相談に乗りますよ。お声がけください。


という具合に、縮小展開のわりには盛りだくさんでお届けします。
過去回で委託本を手に取って下さった方や、近隣の読み手さんのお越しをお待ちしております~!

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11月のイベント参加告知(1)

11月の3連休はイベントラッシュ。委託で2つと直参で1つ参加する、過密スケジュールとなっております。(告知がごちゃごちゃするので、会期終了までブログトップにインデックスを作りますね……)
同時に、今年最後のイベントでもあるので、帰省時や年末年始のこたつライフのおともに、ぜひお迎え頂ければ嬉しいです。

まずは委託参加のイベントのご案内です。


【11/5 北海道コミティア7】
お品書きはこちら。(大きいものと試し読みはPixivでどうぞ)
北ティア7お品書き

「Z-29 灰青」にて参加します。北ティアは去年の秋以来の参加ですが、出品する2種はどちらも初売りです。

秋の新刊「ホクスポクス」はSF・ファンタジーの短編9本入り。公募アンソロやイベントで配布したフリーペーパーの再録を含みます。心持ち他の本より甘め。
拍子のトワイライトPPがめっちゃ上品ですてきなので、ぜひ見て頂きたいです。

掌編集「ポッケ」はついのべ、300字SSの再録と3000字短編を詰め合わせた名刺代わりの小さな本。性質上、試し読みを掲載していないので、見本誌をご覧下さい。文庫サイズ変形(正方形)、角丸の可愛い本です。(中身は薄闇ですが)

このほか、絵描き参加者さんの鉄子さんのスペース(D05 鉄子の部屋)で委託頒布されるコラボアンソロジー「心にいつも竜を」(ここドラ)に参加しています。「世界の半分をお前にやろう」から始まる伝説が息づく世界を描いたスチパン風エンタメ「末裔」を寄せました。まのいさんにダイナミックなイラストをつけて頂いております……!


【11/3~5 Zine展in Beppu4】
お品書きはこちら。(大きいものと試し読みはPixivでどうぞ)
zine展4お品書き

北ティアにも出品する2冊に既刊2冊、それからイベント限定頒布の折本セットの5種が有料頒布、新しく作った二色刷りの名刺が無料配布です。
zine展さんは本を代理購入・送付する「お買い物代行サービス」を実施されますので公式サイトhttps://zinebeppu.jimdo.com/をご確認下さい。手数料がかかりますが、他のサークルさんとのおまとめ通販にとても便利です。うちの本のみでしたら自家通販の方がお安いです(が、折り本セットの取り扱いはありません)。

「折本セット」についてですが、こちらは折本3種を手作り封筒・シールで封入した限定セットです。和紙(大礼紙)にカラーコピー、封筒はクラフト紙。(折本A7サイズ・200円)
折り本セット


朝:倦怠期を知らない恋人たちの朝。未来を視る魔女と機械の体の青年のお話。
昼:政略結婚から始まる恋。2018年1月発行予定の長編「双つ海に炎を奏で」の主人公ののろけ。
夕:最終の汽車が発った後、夜の中で奏でられるヴァイオリン。「Linkage」(「ポッケ」収録)のルーイとナタンの邂逅。

という感じの、どれも3000字程度の作品です。字は小さいです……。
3種とも11/5開催のAde10内「折本フェア」参加作です。Adeの自スペースで配布するほか、三連休頃からネットプリント配信、終了後は個人サイトにてPDFを公開予定です。

このほか、「六角形」をテーマにした短編アンソロジー「べんぜんかん」(卯楽々堂・う-1-1)、鶏の唐揚げをテーマにしたアンソロジー「文芸アンソロジー トリカラ」(cage・け-1-1)にも参加しています。
どちらもとてもユニークで面白いアンソロジーですので、ぜひご覧下さい!


zine展さんは委託オンリーのイベントなのですが、毎回とても素敵に本をディスプレイしておられるし、手厚く扱って下さるとのことで一度参加してみたかったのです。
短編集ばかりで、手に取りやすいラインナップだと思いますので、初めての「灰青」としていかがでしょうか。
イチオシ本として、海と人魚の短編集「エフェメラのさかな」を挙げています。和風ファンタジーからSFまで、バラエティ豊かな6作を収録。試されるエロスと噂の一冊、お試しをお待ちしております(・∀・)

「心にいつも竜を」ふんわり感想 #ここドラ

呉葉さん主催「心にいつも竜を」のふんわり感想です。
ここドラ執筆陣が口々に「いつものやつです」「いつも通りです」と発言していたのをたいへん微笑ましく見守っていましたが、本当に、一分の隙もなく偽りありません。つまり作風がちっともかぶっていませんので、そういう意味でも、ご新規さん・常連さんともにお勧めできる本です。
「竜と人」のテーマがお口に合うようでしたらぜひともどうぞ。

告知サイトはこちら→http://kokodora-anthology.tumblr.com/
小説の試し読み、イラストサンプルもありますよー。
本編のイラスト・カット、別冊については素面でも一万字くらい語れますが、本を開いて衝撃を受けて頂きたいので言及は控えめです。
これ言っちゃうとおしまいですが、見ればわかります。執筆陣が次々とお隠れになって┏┛墓┗┓と化した破壊力です。
花を手向けてやってください。


●凪野基「末裔」


「世界の半分をお前にやろう」という伝説が息づく世界の「その後」を書きました。後味さっぱりのエンタメです。まのいさんの別冊のイラストが……本当にすごくすごいので見て!!メルがめちゃくちゃ可愛い!!
モモンガメルちゃん(命名)に悶絶し、おへそ!褐色肌金髪金眼!!じゃらじゃら!と転げ回り。
これ、もしかして、コンセプトアートって言うやつじゃない……?ヒッ(心停止)
さておき、初稿からかなり手を加えたので、まのいさんにも楽しんでもらえたら何よりです。


●孤伏澤つたゐさん「胎生の竜」


試し読み雑感→つたゐさんは申告通りの愛のお話。竜と愛しあっていると言う少年と、その状態は正常ではなく治療されるべきものであるとするルダと「私」。試し読みで公開されている片鱗を読むだけで、ひりひりするような少年と竜の愛を感じます。治療を拒絶するだろう少年と竜の行く末を思うだけで涙が……(早い)

試し読みで一番読み違えていたのがルダの立場(や考え方)でした。
つたゐさんの竜の本「はだしの竜騎士」ではすれ違いや空回りが多くて、無機的で無情で切なく思ったものですが、それに比べて今作はとても有機的。
火や道具を使うという観点でヒトとそれ以外を分けたとき、加熱調理された「食事」を口にするって、最大限に「ヒト」だと思うんです。そこで線を引くとすると、少数派はどっちだという話で、それが「私」視点で語られる物語に居心地の悪さと、理解の及ばない深み、相互理解など傲慢だと読者に突きつけてくるのだと思います。
昔の(きっと今もある)同性愛(をはじめとするセクマイ)は病気だ、に近い印象を受けました。たぶん「私」は竜に近づこうとして拒絶された経験があるんじゃないか。あるいは身近な人が竜に魅入られたりしたんじゃないか。そんなふうにも思いました。いちばん満たされていない、どうすれば満たされるのかもわからない人。
いつものつたゐさんの作品なんですが、「カレーライス」と「生存戦略」には驚きました。これまで見たことのない言葉だったから。
愛ってなんだ。ましてや異種愛とは?ただ遺伝子の命ずるままに生きる命が、互いを思いやり想いを交わすことなんてあるんだろうか。愛、とは?
読者を思索に突き落とす作品に添えられた鉄子さんのイラストが見事で……あの眼が!眼がね!そして蝶のうつくしさ……。
大丈夫、ハッピーエンドです。


●柊呉葉さん「ドライフ・ライフ」
試し読み雑感→呉葉さんの作品は唯一の現代物ということで、そして竜がマシュマロのようにフワフワ!にやけますよね……!どうやらドライフのお役目に巡りあったようですが、まずは餌。餌ね。この世界の竜は雑食なんでしょうか。(だといいね!)コメディの予感しかありません。よいドライフ・ライフを……!

ふわもこもちもちの竜が見所!加えて、喧嘩っぱやくて、遊んでそうなエキモト君がめろめろになってゆくさまに、読者の顔も緩みっぱなしになること間違いなしです。
思っていたほどコメディ全振りではなくて、出会いがあれば別れもある。それは完全に竜の都合で人間の事情や心情なんて斟酌されない。自然界の(なんて書くと大げさですが)厳しさが垣間見えます。情に流され、欲に振り回されるのはいつだって人間なのだとうっすら闇が透けて見えるのは、私が闇をため込みすぎてるからでしょうか。
この世界での竜と人間は互恵関係でもなくて、竜は人間を利用してるだけなのでは……?むしろ竜にとって人間は害獣なんでは?とも思えるのが、つたゐさんの作品とも共通しますね。ごちゃごちゃ言わずとももふもふは正義、でいいような気もしますが。

そしてそして!闇など見ないふりをして!!ZARIさんのー!!モッフモッフモキュー!!を!見て!!
これはしあわせのもふもふだ……。完全に光だ……。
オールバックが乱れるのも正義……。


●飛瀬貴遥さん「ラジスラフの人攫い竜」


試し読み雑感→飛瀬さんは、妖精とか有翼人がヒトの隣人として暮らしているファンタジックなファンタジー(わかって)を書かれる方だと思っているのですが、いい意味で期待を裏切らない柔らかさと親しみがありました。ミルシュカに何があったのか、そしてこれからどうなるのか、楽しみです。

試し読みから印象の大きな変化がなかったのが飛瀬さん。呼吸するように自然に、隣人としての竜が描かれています。
戸惑いつつも竜との暮らしに馴染んでゆくミルシュカ。うちに抱く鬱屈までもいつしかほぐされていて、人間とのスケールの違いや、いわゆる竜の叡智のようなものが描かれていて、まさに飛瀬さんのファンタジーだと嬉しくなりました。
で、「灰峡翼竜」に「ラジスコラド」ってルビを振るセンス……!(机バン)老いとともに鱗の色が変わる……!先見……!!(机ドン)
ミルシュカは生まれ育った村に帰るのか、はたまた峡谷の村で過ごすのかは明らかにされていませんが、ラストシーンで村長がすっ飛んで来るところなどはおっさんと少女コンビの萌えツボをぐいぐいと突いてきますので、やはり「いつもの飛瀬さん」だなあって。

ビジュアル的にも美しい飛瀬さんの物語を彩る、帝夢さんの表情豊かなイラストがまたたまらんのです。ミルシュカは、芯が強いながらも控えめなタイプなのかと思っていたのですが、くるくると表情が変わるイラストを見ていると年相応の溌剌とした女の子に思えてくるから視覚情報は強いです。
別冊では竜がたっぷり拝めてしあわせ……!


●並木陽さん「暗黒竜フェルニゲシュ」


試し読み雑感→並木さんの「いとも大きく、尊い御方……」はまさに並木さんだし、双頭の竜も(このメンバーでは)並木さんならではだと感じます。そしてえろす!えろす!えろす!(重要ですね)そして壮大なドラマの幕開けを感じさせるヤーノシュ……!ドキムネが止まりません。

並木さんの最新作!とあって、期待されている方も多いのではないでしょうか。私ももちろんその一人なのですけど、ご安心ください、並木作品です。うっとりメロメロの並木作品です。舞台で見たいやつです。
確かな知識と経験、資料と構成・描写力が相まって、豪華なアンソロジーのラストを飾るに相応しい力作に、咲さんの繊細なイラストが華を添え、ゴージャスかつプレシャス、ロマンあふれるドラマチックな絵物語となっています。
王族に仇なすとして滅ぼされた一族、その生き残りの少年ヤーノシュが復讐を誓って美しい王女マリーチカに近づく。火刑台に架けられつつも難を逃れたヤーノシュの姉イブロンカは双頭の竜の妻となっていた――というわけで、ヤーノシュとマリーチカの関係の変化、そして双頭の竜のコミカルな掛け合い、イブロンカとヤーノシュの再会といった人間関係のドラマと、タイトルにもある暗黒竜フェルニゲシュの美竜っぷりが見所です。
一番長い作品ですが、メリハリのある展開で飽きません。息を詰めて結びまで一気に読んで、ほうっとため息をつくはず。
咲さんの美麗なイラストがふんだんに添えられ、別冊では設定のあれこれも拝見できるという眼福すぎる仕様……!!


そして、まったくの偶然なのですが……というか、呉葉さんの編集によるものですが、幕開けと幕引きにそこはかとない共通点があるのは自作贔屓ではないと思います。
ネタバレというほどではありませんが、ぜひ本誌を通読してお確かめください。

10/28テキレボ6で初頒布、お買い物メモ、あるいは代行サービス申込リストに漏れはありませんでしょうか。
11月以降、「灰青」でも委託頒布を行いますので、直参イベントにて頒布します。(福岡とか京都とか……)どうぞお楽しみに!

#トリカラアンソロ ふんわり感想

氷砂糖さん企画・編集「文芸アンソロジー トリカラ」にお招きいただきまして、月面SF「月のトリカラの人」を寄せました。
校正PDFと献本を読んでのふんわり感想をお届けします。


トリカラアンソロは11/3~5開催のzine展in Beppu4合わせに製作されたものですが、納品が早かったのと、寄稿者のやる気が迸って、10/8開催の文フリ福岡にて先行頒布済、10/28開催のテキレボ6でも先行頒布が予定されています。(webカタログはこちら。)
部数限定で、お買い物代行サービスにも対応しておりませんので、ぜひともzine展でお求めください~!zine展のお買い物代行サービスには対応予定とのことですので、発表があるまでお待ちくださいませ。
(ちなみにその後、「灰青」でもお預かり予定です。関西方面のトリカラは任せな!)(?)


●凪野基「月のトリカラの人」

月面都市建設のために月で作業するチームのムードメーカー、バンリが「トリカラたべた~い」を歌います。私にしては珍しく、少々年季入ったボーイズがわちゃわちゃしてるお話。女子もいるけど。強いけど。
後書きのテンションの低さが笑えます!(たまさんのコメントと比べてください……)


●谷津矢車さん「芦野啓介の憂鬱」

谷津先生は歴史作家さんという印象なのですが、ガッチリSFで驚きました。私の「トリカラ本にSFをぶっ込んだら、誰ともネタかぶらんじゃろ」という浅慮が破れたばかりか(いや、ネタはかぶってませんが)並べられるという鬼編集っぷりに私のチキンハートはずたぼろですよ。慰謝料を請求する!

……というのはさておき、シンギュラリティ以降、「執筆AI」なるものが登場した時代に、クラウド上で発見された「夏目漱石以来の大型国民的作家」芦野啓介氏の未発表原稿をめぐっての考察と論争……という内容で、いったいどこにトリカラが?と首を傾げたものですが、そこはそれ。トリカラが重要なファクターとなって、考察は結ばれます。
ミステリではないけれど、とことん客観的に書かれていて不思議な読み口。


●海崎たまさん「トーコのトリカラ弁当」
怪奇やホラーを幻想的に描き出し、硬軟の球を自在に操るたまさん。餅は餅屋的「音楽」を絡ませたお話です。
校正PDFを読み進めながら、完全にメンタルが息絶えましたね……。なぜこの並び!?鬼編集!鬼編集!慰謝料(略)

夕方の真っ赤な太陽に照らされて「しぬ、しなない、しぬ」とリズムを刻みながら花びらをむしるトーコ。タイトルからほのぼの人情噺を予想していたのですが、大きな路線修正を余儀なくされます。
絶対音感(でいいのかな)を持つトーコにとって、街のあらゆる音は「音楽」。それらに興味を持って行かれないように家路を辿る彼女がすれ違う僧侶の一団。僧侶はトーコのお家のお客です。
トーコがお客である僧侶に振る舞うのが「トーコのトリカラ弁当」なわけですが、夕暮れ時の不吉さを切り刻みなぎ払うトーコの手際がまさに音楽的(たぶんきっと、グールドのゴルトベルグ変奏曲が鳴ってる)。僧侶とトリカラの組み合わせにも注目です。
過去作とは少し違ったたまさんの作品、おいしくいただきました。


●豆塚エリさん「かげぼうし」

豆塚さんの作品は詩しか読んだことがないのですが、短編小説であっても流れる空気は同じ、しっとりと艶のあるものでした。「かげぼうしがとよとよと溶けていく」という言い回しはまさに詩の方だなあと思うのです。
逃げているつもりがいつしか逃れられなくなって、夢中になっていることを認めれば、その夢は醒めて日常の一部分になってしまう。そのあやうい均衡にトリカラというまるっきりの日常が寄り添って、だからこそ一線が強調されるのかな。


●七歩さん「天使のトリカラ醤油味」

少年と、天使のような団地妻と、夏休みの宿題。旦那さんがお仕事で家を空けている間に少年はまんまと団地妻と二人きりになって、おいしくいただいてしまうのでした……!!(嘘は書いていません!断じて!)
(このあたりまで来て、ようやく自作がトップに置かれることに対しての赦しを感じ始めたり)

七歩さん流のふんわりしたソフトフォーカスの世界にあって、トリカラの現実味だけが強烈に胃袋を刺激してくる、匠の短編です。
食べること、生きること。おいしく食べたいよねえ。このあたりもすごく七歩さんだな!って。ちなみに私も小麦粉片栗粉ミックス派です。


●流歌さん「フラワー」

引き続き、トリカラに用いる粉論争。初めての小説とのことですが、すごいクオリティですよ。これすごい好き。甘酸っぱい青春!しばらくはトリカラを作るたび、泉は花ちゃんのことを思い出すんだろうなあ。
どきどきそわそわ、気もそぞろの書き出しと、いざ再会の時を迎えても構えていたほどには動揺しなかった(きっと強がりも込みの)結びの差が頼もしく、いとおしい。


●まるた曜子さん「旅連れの叙事詩」

テキレボ新刊の短編集「庭常のサフトに小指をひたして」を一緒に読むとさらに楽しめるのじゃないでしょうか!(にこにこ)
ジャンルとしては終末SF……なんでしょうけど、あまり悲壮感はなくて、それはすごく良かったな。とはいえ、描かれる人間とか生命とかの話はガチすぎるほどガチで、それでも生きていく、と選ぶヒデトはやっぱりまるた作品の子だなあって、いちファンとして嬉しかったです。
まるたさんもSF者だから宇宙間播種……ざっくり言えば宇宙旅行の厄介さ(小説で表現するにあたって、という意味ね)はよくわかっているはずで、そこをクリアするためにウムというシンギュラリティの向こう側の存在を持ってきたのはさすがだなーと思います。私がウム好きなんだよね!という一言に尽きるんだけど。
舞台は違っても、確かにまるた作品。現代ものやファンタジーのまるたさんしか読んだことのない方はぜひ。


●空紅桜さん「楽しい日」

酔いの勢いは無敵!の掌編。楽しく酔える、つまり楽しく飲み食いできる相手と場所があるってことで、何よりのことですよ。


●氷砂糖さん「レモンのひととき」

こおりさんとの出会いが伸縮小説だったので(もちろんめたくそに打ちのめされた)、伸縮小説を読めるのはいつだって嬉しいものです。
「ああ、だめ。わたし、生きてる」で締められる100文字がどんどん広がり背景が立体感と陰影を持ち、「わたし」が生き生きと動き出すさまは、何度体験しても鮮やかな手品を見ているよう。
それは、切り取る文字数と切り取り方、という道具・表現技法が持ちうる危うさでもあるのだけど、隠れ家のような、避難先のような雰囲気のいいバーでいやな気持ちをリセットする、その手順がまるで儀式で、自分を大切にするための儀式を持つ重要さを思うのです。
もともと弱い(真っ赤になる)こともあって、外飲みは滅多にしないけど、こういうお店、憧れるなあ。


●とりのささみ。さん「トリカラ」

とりのささみ。さんが小説を書かれるとは!というだけで驚きだったんですが、短いながらも、これは絵ではなく文字向けのネタだなあとニヤニヤしてしまった次第です。
スパイスの使い方が絶妙なのは、ツイッターで拝見するイラストと同じ。
これは必見ですよ……!


●穂坂コウジさん「トリカラブルース」

いちばん度肝を抜かれた、というか、読んだことのないジャンル(?)の作品で、新鮮でした。ブルースを書かれる方と聞いて、トリカラとブルースとは??ってずっと「?」だったけれど、それが「!」に変わった瞬間でした。良い読書体験!
フォークをギターのようにかき鳴らすトリカラと素面で対面する夏芽。うさんくささもアルコールに紛れ、トリカラの奏でるフォーク、歌うブルースに酔えるメロディアスな作品。フィクションならではの軽やかさが見事。


それでですね、通して読んだ方にはおわかりいただけると思うんですが、「トリカラ」をテーマにした11作、方向性はまったくばらばらなんですけど、こうして一冊にまとまったときに作品から作品へと繋がるバトンがちゃんとあって、11作できちんとリレーができているんですね。穂坂さんからトップの私にも繋がるものがあって、これはもしや神編集なのでは?ってやつですよ。(さっきまでさんざん鬼編集とか罵ってたのは気のせいです)
ふだんの執筆ジャンルも、活動の場所も別なのに、お題「トリカラ」とは別にこうして共通するものがあるのは凄いなあ、と思うのです。
なにがどうリレーされているのか。どうぞ実際にお手にとって、お確かめください。
きっとご満足いただける一皿です。

#名古屋コミティア 51 有難うございました

名古屋コミティア51、無事に終了しました。
ぶっちゃけ無事ではなかったですが……。隣の公園で遊んでいた娘の体調が悪くなり、だいぶ早くに撤収しました。
(娘は一眠りしたら回復しました。お騒がせしました)

4月開催の時に様子を見に行って参加を決めたものの、やはり初参加のコミティアは緊張します。何もかもが手探りでしたが、たくさんの方に本を手に取っていただくことができて良かったです。
設営はこんな感じ↓


初めてだし、と短編集中心の持ち込みでしたが、1部ずつ持って行った「プリズム」「凱歌」が早々となくなってしまって、何だか申し訳なく……!
pixivの試し読みを読んで、と「ホクスポクス」をお買い上げ下さったかた、「ヴェイパートレイル」が良かったと「エフェメラのさかな」を手に取って下さったかたなどなど、宣伝も過去の露出も売り上げに繋がったかな……と思います。

開場直後からハイペースで売れてくれたため、お預かりしていた300字SSポストカードセットが30分ほどで完配、その他のフライヤー類もほとんど配りきることができました。
一方で、自分の長編の告知ペーパーは文フリの残り5枚しか持ってなかったという大失態_(:3 」∠)_
有り難い読み違いでしたが、勿体ないことをしたなあと思います。

お陰様で(午後早くに撤収したにも関わらず)売り上げも頒布数もかなり良い感じでした。
お買い物、ご挨拶に回りきれなかったのが残念ですが、次回以降また改めて……!


というわけで初参加で思ったことなど。今後参加される際の参考になりましたら……。
・スタッフさんが親切。
手慣れてていい意味でシステム化されてて(ティアマガの売り場を、お釣りの要不要で区切るなど)わかりやすかったです。開場前/後ともに、会場外に出るときはスタッフさんが「サクチケかティアマガお持ちですか?(再入場の際に必要)」と声をかけてくださったのも良かったです。

・会場が明るい/机が90×60
明るいのは真ん中配置だったからかもですが、机の奥行きが60だったのは嬉しかった!45のつもりでレイアウトを考えていましたが、ゆったり使えて良かったです。ポスタの使用率は控えめで、島中もゆったりでした。

・スペースの表示がない
机にスペ番とサークル名の表示があるものだと思っていましたが、なくて狼狽えました。(配置図は持ってましたが)
逆に、会場を横切る通路は手前と奥だけでなく島中に二本あり、ブロックの表示が多いせいか迷子にはなりませんでした。

・手搬入でもキャリーは必要
春に様子見に行ったときは、娘のベビーカーを車に積んでいたので駐車場に配慮いただいた(エレベーターを上がってすぐが会場)のですが、今回はふつうに駐車場に停めたので、階段の上り下りがあって両腕が死にました_(:3 」∠)_

・けっこうお話が弾む
弾んだ気がします。宣伝ツイートを見て来て下さった方が見本誌を手に取って吟味してる感じで……。声をかけてよいものか迷いましたがちょこちょこお喋りできました。
決め打ちしなくても回りきれる規模もあると思うけど。

という具合で、次回以降も参加を考えています。次回は1月発行の長編や、参加アンソロジーの委託頒布があると思いますのでまたお立ち寄り頂ければ幸いです!


次回参加イベントは10/28テキレボ6です。こちらは委託参加なので運を天に任せるといった心持ちですね……。(前の告知記事をどうぞ)
11月の3連休はイベントラッシュですので、また追々告知と宣伝をします。よろしくお願いします~。

#テキレボ 6参加情報

10/28、都産貿台東館にて開催されるText-Revolutions6(テキレボ)に参加します。
すでにTLは宣伝が盛んですね。お騒がせしております。
今回は委託参加、スペースは【委託26 灰青】です。お品書きはこんな感じ。
テキレボ6お品書き

頒布物の詳細はwebカタログをご覧下さい。
お品書きページからは参加アンソロジーを含む各作品へのリンクがあるので便利です。
委託参加なので、初めてさんは短編集「ホクスポクス」、常連さんと偉大なる勇者さんは「インフィニティ」、もしくは両方買いでFAだと思っていますので宣伝に力が入らない……フニャ~(抜けた)
(直参だとあれもこれもオススメしたいので大変なのだ)


現在、お買い物代行サービスの申込期間です。(~10/16)
送料と手数料を支払うことで、webカタログに掲載されているアイテムを通販できる、地方住みには大変有り難いサービスです。
・購入確約ではない(=予約・取り置き不可)
・R18(以上)のレイティングのものは購入できない(委託参加者を除く)
・売り切れなどの場合でも手数料の返却はなし
・代金前払い制
など、詳細が準備会サイトに掲載されていますので、ご確認のうえお申し込み下さい。
「灰青」の本もすべて代行サービスでお求め頂けます。長編「インフィニティ」はあまり外部通販の機会がありませんので、この機会にご検討くださいませ。

インフィニティってどんな本?というよくある(かもしれない)質問にお答えしたのがこちら。


(突貫で作ったので余白がガタガタですが気にしない気にしない)

代行サービスでは有料頒布のものだけでなく、無料配布の本やペーパーも取り寄せができるので、気になっているサークルさんの最初の一歩としてや、テキレボの雰囲気を掴むため、同人誌を作ってみたいんだけど、という方にもおすすめです。
忘れてはいけないのが「300字SSポストカードラリー」企画さんのポストカード!「お菓子」をテーマに綴られたポストカードを集めるだけで、立派なアンソロジーの出来上がりです。
無料配布される方が多いので、興味がある/参加したい方はどんどんもらいましょう。代行のリストに掲載されている分だけで130種くらいあります。
私のは企画ブース(A24)にてどうぞ。お菓子の家を扱った「鋭利な希望」という作品です。スウィ~ツな中でおどろおどろしいやつです……。たくさん預けていますのでぜひ!もらってやってください。


テキレボの翌週にはZine展in Beppu、北海道コミティア、福岡Adeなどありますのでそちらでのお求めでも。


持ち込みは↑こちらのツイートの通りです。
長編「インフィニティ」はテキレボでの頒布が年内最終となります。年末年始のおこたのおともに、いかがですか~?(早い)

#べんぜんかん ふんわり感想

10/28開催のText-Revolutions6合わせに発行の「べんぜんかん」の感想です。
著者献本で布表紙版が手元にあるのです。わーい\(^o^)/

こちらは、「絹紬の布張り表紙で手製本を作成したい。内容は布の柄(亀甲)とリンクさせつつ幅広いものにしたい。」という意図から企画されました。「六角形」をモチーフとした6編が集まった「ちょっとふしぎなSSアンソロ」です。主催は「花うさぎ」のうさうららさん。


画像一枚目、中央が製本済みのもの、周りが各ページ(折られてますので片面ですね)です。画像二枚目、三枚目が私の作品「女王陛下の製図室」の見本となります。
提出したのは指定のフォーマットのテキストのみですが、それを主催・うささんがデザインし、こうしてイラストをつけて「どないですやろ?」と返球、それを見事に肝臓だの腎臓だのに受けて ┏┛墓┗┓ と相成ったわけです(※当然ですが比喩です)。

そのおかげか、6編それぞれにジャンルも文体の雰囲気も違うのですが、どこか共通する音を感じつつ、バリエーションを楽しめる不思議な一冊に仕上がっています。
手製本、かつ布張り装丁のぬくみと、小さな物語への没入感、一冊の本を通しての仕掛けなど、近くからもメタ視点からも楽しめる本です。

(以下、感想は企画で使用したサイボウズに投稿したものに加筆修正しました)

●凪野基「女王陛下の製図室」

ふんわり理系ファンタジー。どうぞ扉をノックして、お入りください。看板娘が温かいお茶をご用意しています。


●磯崎愛さん「てすと・てくすと」

いい意味で狐につままれた感、すごく好きな手触りでした。

「とうの昔にいなくなった知的生命体の怨念」が紡ぐテクスト。えすえふです……!そして蚕だなって思いました。
文字を書くこと、文を記すこと、物語を紡ぐことと、このアンソロの元々のアイデアであった紬の亀甲がうまく重ねられていて、メタ的なネタではあるのですが、「僕たち」に感情を寄せてしまいます。
私は感情で読み書きする人で、論理的というにはほど遠いので「僕たちは黒い紙魚のようなもの、かつて自分たちが書き残した文字を食べて、平面を這いずって、文字通り身を削りながら線を描いて消えていきます。僕たちの這いずった痕跡、肉の削れた跡、なんとなれば死骸がそこに文字を綴るのです。」に自分を重ねてしまって、そうやね、そうやねと思ったのです。悲観的な話ではないのですが。

「人権」や「悲惨なものほど売れる」あたりに、世情を感じつつ、「ですがあなたは売り物にはなりますまい。」は磯崎さん自身の宣言であり矜持であるとも感じました。
ラストの一文の潔さがすごく好きです。「新たな地平」が読み手さんに開かれることを願います。
(リアルの)紙に穴をあける、というデザインも手製本ならではで楽しいです。


●うさうららさん「みみず記」

冒頭で示される「ナンバー更新手続き」。猫撫で声のアナウンスが聞こえてくるようです。そして主人公が想起しかけ、慌てて封じた古い記憶。不穏ですね。
ベンゼン環→亀→キュゥっ→*、の流れにどきどきしつつ、磯崎さんの作品との共通点が目立つなあと思っていたらなるほど、「てすと・てくすと」にインスパイアされての作品とのことです。
「こんどは六角形が世界を変えるのだ。モノが変わればヒトも変わる。」にぞくっとしました。
六角形は平面を充填する図形ですが、それに埋め尽くされて均一化された世界はあまり楽しそうではないんですよね……毎度イメージ先行の読み方で申し訳ないです。
磯崎さんのとうささんのとを交互に読んでしまう予感がひしひし……。


●伊織さん「ハミルトニアンの仔鹿」

これは理屈でごちゃごちゃ言う作品ではないと思うのですけど、仔鹿や【ん】の三つ子といったビジュアル的な美しさと、「軽くて丈夫な新しい身体を授かりました」や「ケンキュウジョ」といったテクノロジー的かっこよさが両立した、不思議な手触りでした。
ハミルトニアンは化学用語ですが、語源となったハミルトンさんに感謝したいかっこよさだと思います(笑)
有機化学はあまり得意ではないので、ベンゼンに励起という言葉が正確なのかどうかはわかりませんが、酢漿草の騎士の旅立ちで終わる結びが、また新たな物語の始まりとして良い引きですね……!
うささんの紋も素敵です。鹿の角+酢漿草の紋って、すごく有難い感じがします(笑)


●嘉村詩穂さん「霊亀譚」

書き出しの神社の静謐さ、少女の可憐さが語感・語調よく描かれ、一気に物語世界に入り込むことができました。まさに流れる水のごとき文体は必見です。
水に亀、と浦島太郎を彷彿とさせる図ながら、差し挟まれる鴉の一声の不吉さを読者の心中に置いて、しかし辿り着いた蓮の宮のうつくしさに見惚れるのは少女ばかりではないでしょう。
神社・蓮・花の喩え、歌う四季の鳥。それぞれが相まって、どこでもない世界、異界であることを強く感じました。
乙女と少女の邂逅は、ストレートにえろすでした……。すきです……。
恋の熱に浮かされたその一方で、波間に映る少年の影、さらには侍女の怪しげな術、明かされる「乙女」の企み……というスピーディな展開も素晴らしく、物語の終焉に悪辣さが描かれるというのは、(イメージなのですが)手にした本の最後に墨のような暗雲が立ち込めて読めないとか、読者に対して「ここはおまえの世界ではないのだ」と突き放すようです。
そこではっと我に返り、そして物語から距離を置くことで改めて鴉であるとか、亀であるとかを俯瞰できて、薄ら寒さ(とどうしようもないえろす)を覚えました。

善悪であるとかをまったく取っ払った、頭悪い感想としては「この少年天才やな」です。うつくしいものは良いです。囲いたくもなります。わかる。


●オカワダアキナさん「膝とボイン」

ユーモアと、胸がキュッとなるような痛甘い懐かしさ、おとなの気まぐれでなかったことにされてしまう少年のきらきらした優越がおかさん節だなあと感じました。
「水ギョーザ~」の青葉くんもでしたが、おかさんの書かれるこどもにとってのおとなって、憧れを含んだ存在でありながら、いつか彼らもおとなになるのに、たぶん当人たちはそう考えていないのかなというちょっと舐めてかかった生意気なところが感じられるのが好きです。そのわずかな断絶というか、ブラックボックスの部分が(こどもの視点で描かれる)おとなを魅力的に見せているのだろうと思います。
私は3.14世代ですが、中学校で円周率がπになったとき、「パイ……」「パイだと……」って、ザワッとしたな……というのを思い出しました。
「あれからP回季節が巡り」って、詩的で好きです。

うささんのデザイン案もおかさんワールドを的確に盛り上げていて、台詞の部分は吹き出しのようでゼリーに包まれてるようで、すごく素敵です。


物語を読み終えて、そこに置かれるのは少年を大人にした年月の梯子から伸びるは、梯子をあざなう縄か、あるいは物語を構成する無数の言葉か、はたまた。
ぜひとも実物を手に取ってお確かめください。