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2017年の読書まとめ(商業本)

2017年、商業本読書の振り返りです。
商業本、レンタルDVDなどの記録は一括してメディアマーカーに置いてあります。

2017年の読書目標(漫画、レシピ、雑誌などを除いた、いわゆる「文芸書」のみカウント)は30冊ということでしたが、産後はじめて達成できました。しかも、図書館本が少ないのです。つまり……(目を逸らしながら)(購入金額もMMで見れますのでご興味ありましたらどうぞ)

それはさておき、今年はReaderからhontoアプリに乗り換えたことにより、電子書籍での購入が増えました。積読がけっこうあるのも紙本と同じです。紙本で買いたい作家さんはおおよそ固定されてきたので、それ以外は電子書籍で買い揃えていこうかな、とぼんやり考えています。本を売ることができるという観点からは、話題書や初めての作家さんこそ紙本で買うべきなのではと思わないでもないですが、電書はポイントでの実質割引や、なんといっても体積がゼロというのが捨てがたく。

漫画も、長く続きそうなら電書も選択肢に入ってきました。書き込みを見たいというものは紙本ですが、漫画はスマホで読みづらいので、どうしても紙本を買ってしまいますね……。金カムは電書で買ってたけど、紙本買っちゃったね……フフ……
現状、本棚の拡張は無理なので、うまいこと紙本と電書を使い分けて読書欲を満たしてゆきたいところです。

今年読んだ文芸書30冊+漫画本から、これは良いぞ、おすすめ!な5タイトルを選びました。

(1)人工知能学会「AIと人類は共存できるか?」

AIについての5つの小説作品と、それに関して第一線の研究者さんが科学的見地から解説・意見を述べる、という夢のような本。小説も解説もどちらも凄まじくて、読み応えがありました。
ちょっとお高いけど、AIに興味があるとか、好きな作家さんが参加しておられるとかであれば読んで損はないと思います。
「ここまでできる」と「こうすればもっとできるんじゃないか」のせめぎ合いが楽しい。

(2)墨佳遼「人馬」 全2巻完結済

スピード感と迫力に惹かれて、webで読んでたけど紙本を買いました。人馬とヒトの物語。生きる、駆ける。そんな生命力に溢れたお話です。春頃、ちょうど予定があって帰阪していたとき、奈良で個展が開催されていたので足を運べたのが嬉しかったし、自己満足ですけど、作者さんに直接応援を伝えられたのが良かったなあ。

(3)オキシタケヒコ「筺底のエルピス」 1~5巻まで発売中

異能バトルもの。「停時フィールド」と呼ばれる異能の設定がめちゃめちゃ面白くて、登場する組織がバチカンやイルミナティと中二心をくすぐるアレ、なおかつ時空改変ものとあって、イチオシのラノベです(他にラノベらしいラノベは読んでないけど……)。
導入としてきれいに終わった一巻、続く二巻からは何かきな臭く……アッアッ……アッ……(ツー)(お察し)という感じで、これ完結するまでは死ねない。
PSソフト「トリノホシ」のシナリオライターさんとのことで(未クリアなんですけど)生温い展開にならないことは知っていた、けども……ほんと死ねないんでよろしくお願いします。

(4)入江亜季「北北西に曇と往け」 1巻発売中

「乱と灰色の世界」のあと、どんな作品を……と思っていたら、またもふんわりお茶目とお色気が絶妙にミックスされたお話で私狂喜。ありがとうございますありがとうございます。
ジャンルで言うと、現代ファンタジー?何とも分類しづらいふわっとした感じが好きなんですけど、何も伝わりませんね。知ってる。
入江さんの描かれる少年キャラがだいすきなので、これも続きがすごくすごく楽しみ。

(5)松田青子「ワイルドフラワーの見えない一年

「スタッキング可能」はあまりぴんと来なかったんですけど「英子の森」がめちゃくちゃ面白かった松田青子さんの短編集。どれもさっぱりとした後味で、最高に面白いです。ふんわりしたもの、キリッと締まったもの、ユーモアと毒など、色々なテイストの作品が楽しめます。表題作もですが、「ボンド」も好きだなあ。ちょっとフェミっけが強い作品もあるけど、めっちゃ好き。
宝箱のような、お菓子の詰め合わせみたいな、短編集の魅力がぎゅぎゅっと詰まった一冊。


来年もまた、30冊を目標に読んでいきたいです。まずは積読の消化から\(^o^)/
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「心にいつも竜を」ふんわり感想 #ここドラ

呉葉さん主催「心にいつも竜を」のふんわり感想です。
ここドラ執筆陣が口々に「いつものやつです」「いつも通りです」と発言していたのをたいへん微笑ましく見守っていましたが、本当に、一分の隙もなく偽りありません。つまり作風がちっともかぶっていませんので、そういう意味でも、ご新規さん・常連さんともにお勧めできる本です。
「竜と人」のテーマがお口に合うようでしたらぜひともどうぞ。

告知サイトはこちら→http://kokodora-anthology.tumblr.com/
小説の試し読み、イラストサンプルもありますよー。
本編のイラスト・カット、別冊については素面でも一万字くらい語れますが、本を開いて衝撃を受けて頂きたいので言及は控えめです。
これ言っちゃうとおしまいですが、見ればわかります。執筆陣が次々とお隠れになって┏┛墓┗┓と化した破壊力です。
花を手向けてやってください。


●凪野基「末裔」


「世界の半分をお前にやろう」という伝説が息づく世界の「その後」を書きました。後味さっぱりのエンタメです。まのいさんの別冊のイラストが……本当にすごくすごいので見て!!メルがめちゃくちゃ可愛い!!
モモンガメルちゃん(命名)に悶絶し、おへそ!褐色肌金髪金眼!!じゃらじゃら!と転げ回り。
これ、もしかして、コンセプトアートって言うやつじゃない……?ヒッ(心停止)
さておき、初稿からかなり手を加えたので、まのいさんにも楽しんでもらえたら何よりです。


●孤伏澤つたゐさん「胎生の竜」


試し読み雑感→つたゐさんは申告通りの愛のお話。竜と愛しあっていると言う少年と、その状態は正常ではなく治療されるべきものであるとするルダと「私」。試し読みで公開されている片鱗を読むだけで、ひりひりするような少年と竜の愛を感じます。治療を拒絶するだろう少年と竜の行く末を思うだけで涙が……(早い)

試し読みで一番読み違えていたのがルダの立場(や考え方)でした。
つたゐさんの竜の本「はだしの竜騎士」ではすれ違いや空回りが多くて、無機的で無情で切なく思ったものですが、それに比べて今作はとても有機的。
火や道具を使うという観点でヒトとそれ以外を分けたとき、加熱調理された「食事」を口にするって、最大限に「ヒト」だと思うんです。そこで線を引くとすると、少数派はどっちだという話で、それが「私」視点で語られる物語に居心地の悪さと、理解の及ばない深み、相互理解など傲慢だと読者に突きつけてくるのだと思います。
昔の(きっと今もある)同性愛(をはじめとするセクマイ)は病気だ、に近い印象を受けました。たぶん「私」は竜に近づこうとして拒絶された経験があるんじゃないか。あるいは身近な人が竜に魅入られたりしたんじゃないか。そんなふうにも思いました。いちばん満たされていない、どうすれば満たされるのかもわからない人。
いつものつたゐさんの作品なんですが、「カレーライス」と「生存戦略」には驚きました。これまで見たことのない言葉だったから。
愛ってなんだ。ましてや異種愛とは?ただ遺伝子の命ずるままに生きる命が、互いを思いやり想いを交わすことなんてあるんだろうか。愛、とは?
読者を思索に突き落とす作品に添えられた鉄子さんのイラストが見事で……あの眼が!眼がね!そして蝶のうつくしさ……。
大丈夫、ハッピーエンドです。


●柊呉葉さん「ドライフ・ライフ」
試し読み雑感→呉葉さんの作品は唯一の現代物ということで、そして竜がマシュマロのようにフワフワ!にやけますよね……!どうやらドライフのお役目に巡りあったようですが、まずは餌。餌ね。この世界の竜は雑食なんでしょうか。(だといいね!)コメディの予感しかありません。よいドライフ・ライフを……!

ふわもこもちもちの竜が見所!加えて、喧嘩っぱやくて、遊んでそうなエキモト君がめろめろになってゆくさまに、読者の顔も緩みっぱなしになること間違いなしです。
思っていたほどコメディ全振りではなくて、出会いがあれば別れもある。それは完全に竜の都合で人間の事情や心情なんて斟酌されない。自然界の(なんて書くと大げさですが)厳しさが垣間見えます。情に流され、欲に振り回されるのはいつだって人間なのだとうっすら闇が透けて見えるのは、私が闇をため込みすぎてるからでしょうか。
この世界での竜と人間は互恵関係でもなくて、竜は人間を利用してるだけなのでは……?むしろ竜にとって人間は害獣なんでは?とも思えるのが、つたゐさんの作品とも共通しますね。ごちゃごちゃ言わずとももふもふは正義、でいいような気もしますが。

そしてそして!闇など見ないふりをして!!ZARIさんのー!!モッフモッフモキュー!!を!見て!!
これはしあわせのもふもふだ……。完全に光だ……。
オールバックが乱れるのも正義……。


●飛瀬貴遥さん「ラジスラフの人攫い竜」


試し読み雑感→飛瀬さんは、妖精とか有翼人がヒトの隣人として暮らしているファンタジックなファンタジー(わかって)を書かれる方だと思っているのですが、いい意味で期待を裏切らない柔らかさと親しみがありました。ミルシュカに何があったのか、そしてこれからどうなるのか、楽しみです。

試し読みから印象の大きな変化がなかったのが飛瀬さん。呼吸するように自然に、隣人としての竜が描かれています。
戸惑いつつも竜との暮らしに馴染んでゆくミルシュカ。うちに抱く鬱屈までもいつしかほぐされていて、人間とのスケールの違いや、いわゆる竜の叡智のようなものが描かれていて、まさに飛瀬さんのファンタジーだと嬉しくなりました。
で、「灰峡翼竜」に「ラジスコラド」ってルビを振るセンス……!(机バン)老いとともに鱗の色が変わる……!先見……!!(机ドン)
ミルシュカは生まれ育った村に帰るのか、はたまた峡谷の村で過ごすのかは明らかにされていませんが、ラストシーンで村長がすっ飛んで来るところなどはおっさんと少女コンビの萌えツボをぐいぐいと突いてきますので、やはり「いつもの飛瀬さん」だなあって。

ビジュアル的にも美しい飛瀬さんの物語を彩る、帝夢さんの表情豊かなイラストがまたたまらんのです。ミルシュカは、芯が強いながらも控えめなタイプなのかと思っていたのですが、くるくると表情が変わるイラストを見ていると年相応の溌剌とした女の子に思えてくるから視覚情報は強いです。
別冊では竜がたっぷり拝めてしあわせ……!


●並木陽さん「暗黒竜フェルニゲシュ」


試し読み雑感→並木さんの「いとも大きく、尊い御方……」はまさに並木さんだし、双頭の竜も(このメンバーでは)並木さんならではだと感じます。そしてえろす!えろす!えろす!(重要ですね)そして壮大なドラマの幕開けを感じさせるヤーノシュ……!ドキムネが止まりません。

並木さんの最新作!とあって、期待されている方も多いのではないでしょうか。私ももちろんその一人なのですけど、ご安心ください、並木作品です。うっとりメロメロの並木作品です。舞台で見たいやつです。
確かな知識と経験、資料と構成・描写力が相まって、豪華なアンソロジーのラストを飾るに相応しい力作に、咲さんの繊細なイラストが華を添え、ゴージャスかつプレシャス、ロマンあふれるドラマチックな絵物語となっています。
王族に仇なすとして滅ぼされた一族、その生き残りの少年ヤーノシュが復讐を誓って美しい王女マリーチカに近づく。火刑台に架けられつつも難を逃れたヤーノシュの姉イブロンカは双頭の竜の妻となっていた――というわけで、ヤーノシュとマリーチカの関係の変化、そして双頭の竜のコミカルな掛け合い、イブロンカとヤーノシュの再会といった人間関係のドラマと、タイトルにもある暗黒竜フェルニゲシュの美竜っぷりが見所です。
一番長い作品ですが、メリハリのある展開で飽きません。息を詰めて結びまで一気に読んで、ほうっとため息をつくはず。
咲さんの美麗なイラストがふんだんに添えられ、別冊では設定のあれこれも拝見できるという眼福すぎる仕様……!!


そして、まったくの偶然なのですが……というか、呉葉さんの編集によるものですが、幕開けと幕引きにそこはかとない共通点があるのは自作贔屓ではないと思います。
ネタバレというほどではありませんが、ぜひ本誌を通読してお確かめください。

10/28テキレボ6で初頒布、お買い物メモ、あるいは代行サービス申込リストに漏れはありませんでしょうか。
11月以降、「灰青」でも委託頒布を行いますので、直参イベントにて頒布します。(福岡とか京都とか……)どうぞお楽しみに!

#トリカラアンソロ ふんわり感想

氷砂糖さん企画・編集「文芸アンソロジー トリカラ」にお招きいただきまして、月面SF「月のトリカラの人」を寄せました。
校正PDFと献本を読んでのふんわり感想をお届けします。


トリカラアンソロは11/3~5開催のzine展in Beppu4合わせに製作されたものですが、納品が早かったのと、寄稿者のやる気が迸って、10/8開催の文フリ福岡にて先行頒布済、10/28開催のテキレボ6でも先行頒布が予定されています。(webカタログはこちら。)
部数限定で、お買い物代行サービスにも対応しておりませんので、ぜひともzine展でお求めください~!zine展のお買い物代行サービスには対応予定とのことですので、発表があるまでお待ちくださいませ。
(ちなみにその後、「灰青」でもお預かり予定です。関西方面のトリカラは任せな!)(?)


●凪野基「月のトリカラの人」

月面都市建設のために月で作業するチームのムードメーカー、バンリが「トリカラたべた~い」を歌います。私にしては珍しく、少々年季入ったボーイズがわちゃわちゃしてるお話。女子もいるけど。強いけど。
後書きのテンションの低さが笑えます!(たまさんのコメントと比べてください……)


●谷津矢車さん「芦野啓介の憂鬱」

谷津先生は歴史作家さんという印象なのですが、ガッチリSFで驚きました。私の「トリカラ本にSFをぶっ込んだら、誰ともネタかぶらんじゃろ」という浅慮が破れたばかりか(いや、ネタはかぶってませんが)並べられるという鬼編集っぷりに私のチキンハートはずたぼろですよ。慰謝料を請求する!

……というのはさておき、シンギュラリティ以降、「執筆AI」なるものが登場した時代に、クラウド上で発見された「夏目漱石以来の大型国民的作家」芦野啓介氏の未発表原稿をめぐっての考察と論争……という内容で、いったいどこにトリカラが?と首を傾げたものですが、そこはそれ。トリカラが重要なファクターとなって、考察は結ばれます。
ミステリではないけれど、とことん客観的に書かれていて不思議な読み口。


●海崎たまさん「トーコのトリカラ弁当」
怪奇やホラーを幻想的に描き出し、硬軟の球を自在に操るたまさん。餅は餅屋的「音楽」を絡ませたお話です。
校正PDFを読み進めながら、完全にメンタルが息絶えましたね……。なぜこの並び!?鬼編集!鬼編集!慰謝料(略)

夕方の真っ赤な太陽に照らされて「しぬ、しなない、しぬ」とリズムを刻みながら花びらをむしるトーコ。タイトルからほのぼの人情噺を予想していたのですが、大きな路線修正を余儀なくされます。
絶対音感(でいいのかな)を持つトーコにとって、街のあらゆる音は「音楽」。それらに興味を持って行かれないように家路を辿る彼女がすれ違う僧侶の一団。僧侶はトーコのお家のお客です。
トーコがお客である僧侶に振る舞うのが「トーコのトリカラ弁当」なわけですが、夕暮れ時の不吉さを切り刻みなぎ払うトーコの手際がまさに音楽的(たぶんきっと、グールドのゴルトベルグ変奏曲が鳴ってる)。僧侶とトリカラの組み合わせにも注目です。
過去作とは少し違ったたまさんの作品、おいしくいただきました。


●豆塚エリさん「かげぼうし」

豆塚さんの作品は詩しか読んだことがないのですが、短編小説であっても流れる空気は同じ、しっとりと艶のあるものでした。「かげぼうしがとよとよと溶けていく」という言い回しはまさに詩の方だなあと思うのです。
逃げているつもりがいつしか逃れられなくなって、夢中になっていることを認めれば、その夢は醒めて日常の一部分になってしまう。そのあやうい均衡にトリカラというまるっきりの日常が寄り添って、だからこそ一線が強調されるのかな。


●七歩さん「天使のトリカラ醤油味」

少年と、天使のような団地妻と、夏休みの宿題。旦那さんがお仕事で家を空けている間に少年はまんまと団地妻と二人きりになって、おいしくいただいてしまうのでした……!!(嘘は書いていません!断じて!)
(このあたりまで来て、ようやく自作がトップに置かれることに対しての赦しを感じ始めたり)

七歩さん流のふんわりしたソフトフォーカスの世界にあって、トリカラの現実味だけが強烈に胃袋を刺激してくる、匠の短編です。
食べること、生きること。おいしく食べたいよねえ。このあたりもすごく七歩さんだな!って。ちなみに私も小麦粉片栗粉ミックス派です。


●流歌さん「フラワー」

引き続き、トリカラに用いる粉論争。初めての小説とのことですが、すごいクオリティですよ。これすごい好き。甘酸っぱい青春!しばらくはトリカラを作るたび、泉は花ちゃんのことを思い出すんだろうなあ。
どきどきそわそわ、気もそぞろの書き出しと、いざ再会の時を迎えても構えていたほどには動揺しなかった(きっと強がりも込みの)結びの差が頼もしく、いとおしい。


●まるた曜子さん「旅連れの叙事詩」

テキレボ新刊の短編集「庭常のサフトに小指をひたして」を一緒に読むとさらに楽しめるのじゃないでしょうか!(にこにこ)
ジャンルとしては終末SF……なんでしょうけど、あまり悲壮感はなくて、それはすごく良かったな。とはいえ、描かれる人間とか生命とかの話はガチすぎるほどガチで、それでも生きていく、と選ぶヒデトはやっぱりまるた作品の子だなあって、いちファンとして嬉しかったです。
まるたさんもSF者だから宇宙間播種……ざっくり言えば宇宙旅行の厄介さ(小説で表現するにあたって、という意味ね)はよくわかっているはずで、そこをクリアするためにウムというシンギュラリティの向こう側の存在を持ってきたのはさすがだなーと思います。私がウム好きなんだよね!という一言に尽きるんだけど。
舞台は違っても、確かにまるた作品。現代ものやファンタジーのまるたさんしか読んだことのない方はぜひ。


●空紅桜さん「楽しい日」

酔いの勢いは無敵!の掌編。楽しく酔える、つまり楽しく飲み食いできる相手と場所があるってことで、何よりのことですよ。


●氷砂糖さん「レモンのひととき」

こおりさんとの出会いが伸縮小説だったので(もちろんめたくそに打ちのめされた)、伸縮小説を読めるのはいつだって嬉しいものです。
「ああ、だめ。わたし、生きてる」で締められる100文字がどんどん広がり背景が立体感と陰影を持ち、「わたし」が生き生きと動き出すさまは、何度体験しても鮮やかな手品を見ているよう。
それは、切り取る文字数と切り取り方、という道具・表現技法が持ちうる危うさでもあるのだけど、隠れ家のような、避難先のような雰囲気のいいバーでいやな気持ちをリセットする、その手順がまるで儀式で、自分を大切にするための儀式を持つ重要さを思うのです。
もともと弱い(真っ赤になる)こともあって、外飲みは滅多にしないけど、こういうお店、憧れるなあ。


●とりのささみ。さん「トリカラ」

とりのささみ。さんが小説を書かれるとは!というだけで驚きだったんですが、短いながらも、これは絵ではなく文字向けのネタだなあとニヤニヤしてしまった次第です。
スパイスの使い方が絶妙なのは、ツイッターで拝見するイラストと同じ。
これは必見ですよ……!


●穂坂コウジさん「トリカラブルース」

いちばん度肝を抜かれた、というか、読んだことのないジャンル(?)の作品で、新鮮でした。ブルースを書かれる方と聞いて、トリカラとブルースとは??ってずっと「?」だったけれど、それが「!」に変わった瞬間でした。良い読書体験!
フォークをギターのようにかき鳴らすトリカラと素面で対面する夏芽。うさんくささもアルコールに紛れ、トリカラの奏でるフォーク、歌うブルースに酔えるメロディアスな作品。フィクションならではの軽やかさが見事。


それでですね、通して読んだ方にはおわかりいただけると思うんですが、「トリカラ」をテーマにした11作、方向性はまったくばらばらなんですけど、こうして一冊にまとまったときに作品から作品へと繋がるバトンがちゃんとあって、11作できちんとリレーができているんですね。穂坂さんからトップの私にも繋がるものがあって、これはもしや神編集なのでは?ってやつですよ。(さっきまでさんざん鬼編集とか罵ってたのは気のせいです)
ふだんの執筆ジャンルも、活動の場所も別なのに、お題「トリカラ」とは別にこうして共通するものがあるのは凄いなあ、と思うのです。
なにがどうリレーされているのか。どうぞ実際にお手にとって、お確かめください。
きっとご満足いただける一皿です。

#べんぜんかん ふんわり感想

10/28開催のText-Revolutions6合わせに発行の「べんぜんかん」の感想です。
著者献本で布表紙版が手元にあるのです。わーい\(^o^)/

こちらは、「絹紬の布張り表紙で手製本を作成したい。内容は布の柄(亀甲)とリンクさせつつ幅広いものにしたい。」という意図から企画されました。「六角形」をモチーフとした6編が集まった「ちょっとふしぎなSSアンソロ」です。主催は「花うさぎ」のうさうららさん。


画像一枚目、中央が製本済みのもの、周りが各ページ(折られてますので片面ですね)です。画像二枚目、三枚目が私の作品「女王陛下の製図室」の見本となります。
提出したのは指定のフォーマットのテキストのみですが、それを主催・うささんがデザインし、こうしてイラストをつけて「どないですやろ?」と返球、それを見事に肝臓だの腎臓だのに受けて ┏┛墓┗┓ と相成ったわけです(※当然ですが比喩です)。

そのおかげか、6編それぞれにジャンルも文体の雰囲気も違うのですが、どこか共通する音を感じつつ、バリエーションを楽しめる不思議な一冊に仕上がっています。
手製本、かつ布張り装丁のぬくみと、小さな物語への没入感、一冊の本を通しての仕掛けなど、近くからもメタ視点からも楽しめる本です。

(以下、感想は企画で使用したサイボウズに投稿したものに加筆修正しました)

●凪野基「女王陛下の製図室」

ふんわり理系ファンタジー。どうぞ扉をノックして、お入りください。看板娘が温かいお茶をご用意しています。


●磯崎愛さん「てすと・てくすと」

いい意味で狐につままれた感、すごく好きな手触りでした。

「とうの昔にいなくなった知的生命体の怨念」が紡ぐテクスト。えすえふです……!そして蚕だなって思いました。
文字を書くこと、文を記すこと、物語を紡ぐことと、このアンソロの元々のアイデアであった紬の亀甲がうまく重ねられていて、メタ的なネタではあるのですが、「僕たち」に感情を寄せてしまいます。
私は感情で読み書きする人で、論理的というにはほど遠いので「僕たちは黒い紙魚のようなもの、かつて自分たちが書き残した文字を食べて、平面を這いずって、文字通り身を削りながら線を描いて消えていきます。僕たちの這いずった痕跡、肉の削れた跡、なんとなれば死骸がそこに文字を綴るのです。」に自分を重ねてしまって、そうやね、そうやねと思ったのです。悲観的な話ではないのですが。

「人権」や「悲惨なものほど売れる」あたりに、世情を感じつつ、「ですがあなたは売り物にはなりますまい。」は磯崎さん自身の宣言であり矜持であるとも感じました。
ラストの一文の潔さがすごく好きです。「新たな地平」が読み手さんに開かれることを願います。
(リアルの)紙に穴をあける、というデザインも手製本ならではで楽しいです。


●うさうららさん「みみず記」

冒頭で示される「ナンバー更新手続き」。猫撫で声のアナウンスが聞こえてくるようです。そして主人公が想起しかけ、慌てて封じた古い記憶。不穏ですね。
ベンゼン環→亀→キュゥっ→*、の流れにどきどきしつつ、磯崎さんの作品との共通点が目立つなあと思っていたらなるほど、「てすと・てくすと」にインスパイアされての作品とのことです。
「こんどは六角形が世界を変えるのだ。モノが変わればヒトも変わる。」にぞくっとしました。
六角形は平面を充填する図形ですが、それに埋め尽くされて均一化された世界はあまり楽しそうではないんですよね……毎度イメージ先行の読み方で申し訳ないです。
磯崎さんのとうささんのとを交互に読んでしまう予感がひしひし……。


●伊織さん「ハミルトニアンの仔鹿」

これは理屈でごちゃごちゃ言う作品ではないと思うのですけど、仔鹿や【ん】の三つ子といったビジュアル的な美しさと、「軽くて丈夫な新しい身体を授かりました」や「ケンキュウジョ」といったテクノロジー的かっこよさが両立した、不思議な手触りでした。
ハミルトニアンは化学用語ですが、語源となったハミルトンさんに感謝したいかっこよさだと思います(笑)
有機化学はあまり得意ではないので、ベンゼンに励起という言葉が正確なのかどうかはわかりませんが、酢漿草の騎士の旅立ちで終わる結びが、また新たな物語の始まりとして良い引きですね……!
うささんの紋も素敵です。鹿の角+酢漿草の紋って、すごく有難い感じがします(笑)


●嘉村詩穂さん「霊亀譚」

書き出しの神社の静謐さ、少女の可憐さが語感・語調よく描かれ、一気に物語世界に入り込むことができました。まさに流れる水のごとき文体は必見です。
水に亀、と浦島太郎を彷彿とさせる図ながら、差し挟まれる鴉の一声の不吉さを読者の心中に置いて、しかし辿り着いた蓮の宮のうつくしさに見惚れるのは少女ばかりではないでしょう。
神社・蓮・花の喩え、歌う四季の鳥。それぞれが相まって、どこでもない世界、異界であることを強く感じました。
乙女と少女の邂逅は、ストレートにえろすでした……。すきです……。
恋の熱に浮かされたその一方で、波間に映る少年の影、さらには侍女の怪しげな術、明かされる「乙女」の企み……というスピーディな展開も素晴らしく、物語の終焉に悪辣さが描かれるというのは、(イメージなのですが)手にした本の最後に墨のような暗雲が立ち込めて読めないとか、読者に対して「ここはおまえの世界ではないのだ」と突き放すようです。
そこではっと我に返り、そして物語から距離を置くことで改めて鴉であるとか、亀であるとかを俯瞰できて、薄ら寒さ(とどうしようもないえろす)を覚えました。

善悪であるとかをまったく取っ払った、頭悪い感想としては「この少年天才やな」です。うつくしいものは良いです。囲いたくもなります。わかる。


●オカワダアキナさん「膝とボイン」

ユーモアと、胸がキュッとなるような痛甘い懐かしさ、おとなの気まぐれでなかったことにされてしまう少年のきらきらした優越がおかさん節だなあと感じました。
「水ギョーザ~」の青葉くんもでしたが、おかさんの書かれるこどもにとってのおとなって、憧れを含んだ存在でありながら、いつか彼らもおとなになるのに、たぶん当人たちはそう考えていないのかなというちょっと舐めてかかった生意気なところが感じられるのが好きです。そのわずかな断絶というか、ブラックボックスの部分が(こどもの視点で描かれる)おとなを魅力的に見せているのだろうと思います。
私は3.14世代ですが、中学校で円周率がπになったとき、「パイ……」「パイだと……」って、ザワッとしたな……というのを思い出しました。
「あれからP回季節が巡り」って、詩的で好きです。

うささんのデザイン案もおかさんワールドを的確に盛り上げていて、台詞の部分は吹き出しのようでゼリーに包まれてるようで、すごく素敵です。


物語を読み終えて、そこに置かれるのは少年を大人にした年月の梯子から伸びるは、梯子をあざなう縄か、あるいは物語を構成する無数の言葉か、はたまた。
ぜひとも実物を手に取ってお確かめください。

#テキレボでオススメの本 (テキレボ6ver.)

恒例のオススメ本紹介です。基本的に前回(テキレボ5)以降のイベントで購入して読了した本を挙げています。買って積んでる本もたくさんあるので……そこはそれ……お察し……!!
前回前々回のオススメ本も合わせてどうぞ。


「しろたえの島、いつくしの嶺(一)(二)」by 鹿紙路(ブース番号:A-01)
鹿紙さんのゆりは上品で、でもちゃんとえちいので読み応えがあります。文化や背景描写も抜かりなく、安心して読めます。製作もおがんばりください……\おうえん/


「たんたん併」by S.Y.S.文学分室(ブース番号:B-24)
どんでん返しが気持ちの良い作品と、うわーお……と思いながらも目を離せないブラックな作品が収録された短編集。テキレボアンソロ掲載作の「みっちゃん」が好き。


「嘘つきの再会は夜の檻で」by 眠る樹海堂(ブース番号:B-25)
食えない人たちが不器用に過去を乗り越えてゆくさまが見所。読みながら「エッ大丈夫?これ大丈夫??」と不安で仕方なかったのですが、無事に丸く収まって良かった……。途中けっこうつらいし、パパさんは一発(とは言わず)腹パンしたいところですけど、ホント丸く収まって良かった……。


「夢の音がきこえる」by UROKO(ブース番号:B-29)
ディズニー映画のIFを描く短編集。あり得たかもしれない甘美さと、目にうつる現実のままならなさと。怖いの苦手なんで三谷さんの本を警戒していたのですが(すいません)、これは大丈夫でした。ファンの方は必見。


「飛ぶ蟹」by ザネリ(ブース番号:C-05)
オカワダ文学の入門編としてお勧めしたい短編集。長いのがいけるなら「ぎょくおん」を勧めたいですが、お試しとしてはこちらの短編集が気軽かな。どれも最初の一行から「オカワダプレゼンツ」ってはっきりわかる雰囲気と力があります。「ひととおりの憂鬱」が好き。


「卵怪談」by チャボ文庫(ブース番号:C-06)
たまさん入門としてはこちらがおすすめ(スノーホワイトを積んでるので)。「海に降る雪」はもちっと純文度高め。どちらも独特の翳りと隠微さと湿度があって、たまらんのです……。


「キンコ・ビーチ」by 漣編集室(ブース番号:C-12)
キンコをめぐる短編集。キンコってなに?そんな方は試し読み(前回の公式アンソロ「嘘」参加作)をどうぞ。おかしみとかなしみと、それらからふわっと解き放たれる軽やかさと。


「【新刊】庭常のサフトに小指をひたして【短編集】」by 博物館リュボーフィ(ブース番号:E-19)
まるた作品は断然長編がお勧めなんだけど、入口として新作短編集は如何でしょうか~。「あなたのとなりで」はSFスキーさん必見。「山鳩」に度肝抜かれた方は多いのでは。ブルータス、わたしもだ。


「【代行非対応】文芸アンソロジー トリカラ【委託】」by 博物館リュボーフィ(ブース番号:E-19)
参加者用校正PDFで一足お先に読了しております(10月中旬頃に感想を上げるのでお待ちください)。このトリカラがすごい2017。作風を知っている方も初めましての方もいらっしゃったのだけど、いやーすごい。SFあり恋愛ありのバラエティゆたかなトリカラでした。飯テロ力も高いのでお気をつけください。


「この夜が明けたら」by 夢想甲殻類(ブース番号:F-02)
翼を負わされ、命じられて飛ぶ少女たち。大人たちのエゴの重さに比べ、子どもたちの生命はあまりにも軽い。だからこそ夜明けを待ち侘びる心は強く切なく、太陽を呼び寄せる。立ち向かう少女たちの物語。


「茨の聖女」by 空想工房(ブース番号:F-05)
アンソロが可愛かった世界樹シリーズは注目度が高そうなので、敢えてこちらを推します。うっかり爆誕してしまったジャンル「尻ファンタジー」!!中身はシリアスとの解説に「尻アス?」と外野が揃って首を傾げた「尻ファンタジー」!!刮目してご覧下さい。


「時柴流星の変身」by 空想工房(ブース番号:F-05)
泡野作品は(「剣士と赤竜」もお勧めなのですけど、再録予定のお話と併せて読んでほしいこともあって)単独で読めるこちらをチョイス。わんわんに変身してしまう男子高校生……トラブルの予感しかない。笑えて泣けてしんみり、そして元気になれるエンタメ作品です。


「ガラ」by イノセントフラワァ(ブース番号:F-18)
戦!政略結婚!新妻!子作り!そして戦!と、清森さん作品のオリジナリティあふれる苛烈さが堪能できる一冊です。それぞれの戦いを生きるガラとグレーテの生きざま、勝ちに行くのか負けぬことを選ぶのか、そのあたりの駆け引きも大変面白く、だからこそ最後の決断は涙なしには読めない……。珠玉のファンタジー。


「海嶺谿異経」by ヨモツヘグイニナ(ブース番号:F-23)
公式アンソロ「マッコウクジラ」がお好きな方には文句なくお勧め。海属性のつたゐさん作品の良い導入だと思います。幻想属性(あるいはここドラ掲載作でティンと来た方におすすめ)だと「はだしの竜騎士」かな。「人に寄せないで」いのちを描く希有な書き手さんです。


「嘘の町を出ていく」by おとといあさって(ブース番号:F-26)
嘘の都〈ペテンブルク〉が舞台。この一言に魅力を感じた方は購入待ったなしです。時計技師の青年ぺトレと、からくり人形シアーシャの、ふしぎでかなしい恋のお話。最後まで読んで、「あぁ……」ってつくため息までが物語。読み手を巻き込んだ物語の紡ぎ手・らしさんこそが「技師」なのではないかなあ。


「べんぜんかん布表紙版」by 花うさぎ(ブース番号:委託-21)
著者献本で一足お先に読了しております。「六角形」をテーマに集まった6編の小さなお話に、主催・うささんがイラストを入れ、全ページのデザインを担当されました。そのせいか、まったく方向性の違う物語なのにどこか共通点があって、読み進めるに従って「!」となるとんでもない仕掛けです。視覚の力ってすごい。手製本ならではの触り心地や温度も絶妙なのでぜひ。


「君と食べ物があればいい ブロマンズ・BL掌編作品再録集」by またまたご冗談を!(ブース番号:委託-31)
食べずに生きていくことはできないから、「食べる」ことを丁寧に扱った本が好きだし、食べることを粗末にしない物語が好き。こちらは「おいしいものをきみと食べたい」ということで、ドンピシャでした。


「アイノマジナイ」by cage(ブース番号:委託-50)
物語ること、を語るに長けた氷砂糖さんによる、語り手と生のお話。マジナイの名は「呪い」となるのか、それとも。挿入される作中作がどれも見事。伸縮小説はいつ見ても圧巻……。
これはナギノさんは好きだと思う、と事前に予告があったとおり好きでした。けしからんもっとやれ。